中島理論における活躍馬の基本的な血統確認。それは、「母の受胎条件」と共に「4代血統構成(父、母父、祖母父、曾祖母父)」を確認することと、改めて思いました。皐月賞(JpnI)前の「第67回皐月賞(JpnI)の有力馬について-其の壱-。」というエントリから着想を得て、突然の思いつきではなはだ恐縮ですが、今年2007年は母の受胎条件と共に、中長距離GIについては、こちらも行っていきたいと思います。よろしくお願い致します。
という訳で、第135回天皇賞・春について。
戦前の主役は、やはり、「前走大阪杯勝ち」「母の初仔」というフォローの風を受けて、改めて長距離GIに挑む昨年の2冠馬メイショウサムソン(2003.3.7)。59kg背負って古馬GIIを制したのですから、サスガに地力はあります。ダテや酔狂で2冠馬にはなれません。
そんなメイショウサムソン。4代血統構成の組み合わせを確認すると……、
「オペラハウス×ダンシングブレーヴ×サンプリンス×フォルティノ」
(「Sadler’s Wells系×Lyphard系×Princely Gift系×Grey Sovereign系」)
です。血統表上では、4代血統構成はいずれもPhalaris(1913)系Nearco(1935.1.24)分枝の馬たちです。Northern Dancer(1961.5.27)系2本、Nasrullah(1940.3.2)系2本の配合で、5代血統表内ではNorthern Dancer3×4のクロスが見えます。
皐月賞の折にも確認しましたが、
- 血統表上における「Phalaris系4本掛け」の配合馬はGIレースで敗れることが多い
という観点から、過去20年の天皇賞・春連対馬40頭を確認したところ、血統表上におけるPhalaris系4本掛けの配合馬は以下の通りでした。
- 1995年 2着 ステージチャンプ(1990.5.17)
- 2000年 1着 テイエムオペラオー(1996.3.13)
- 2001年 1着 テイエムオペラオー(1996.3.13)
- 2001年 2着 メイショウドトウ(1996.3.25)
- 2003年 2着 サンライズジェガー(1998.5.19)
- 2005年 2着 ビッグゴールド(1998.3.21)
- 2006年 2着 リンカーン(2000.3.18)
「40分の7」を多いと見るか、少ないと見るか。って、皐月賞とまったく同じことを書いてます(苦笑)。延べ頭数では7頭ですが、テイエムオペラオーにより、連対した馬の数自体は6頭ですね。 また、↑のリストより、1着になった馬は2000年、2001年と世紀をまたいで連覇を果たしたテイエムオペラオーただ1頭ですね。
まず、6頭のうち4頭に共通する点として、
- 母が前年産駒なし後の仔
が挙げられますね。ステージチャンプは母の初仔、テイエムオペラオーは母が不受胎後の7番仔、サンライズジェガーは母が不受胎後の2番仔、リンカーンは母の初仔です。
また、6頭の4代血統構成を表のページと同様にアルファベットで仕分けをすると、以下の表になります。
馬名 (生年月日)[受胎条件] |
4代血統構成 |
---|---|
ステージチャンプ (1990.5.17) [初仔] |
A A y A(RG) |
テイエムオペラオー (1996.3.13)[不-7] |
A(SW系) A(RG系) A A |
メイショウドトウ (1996.3.25)[3-8] |
A ★x A A |
サンライズジェガー (1998.5.19)[不-2] |
A A(PG系) A A |
ビッグゴールド (1998.3.21)[4?-4?] |
A x x y |
リンカーン (2000.3.18)[初仔] |
A(SS) A A(SW) ★A |
#[受胎条件]の内容はお分かり頂けると思います。例えば、テイエムオペラオーの[不-7]であれば、「母が不受胎後の7番仔」という意味です。ハイフンの左側に連産数、右側に何番仔であるかを示しています。ステージチャンプのように「初仔」の場合は、そのまま[初仔]と書いています。
#また、思い付きで、突然「SW系」とか「PG系」とか書いていますけれど、「Sadler’s Wells系」「Princely Gift系」という意味と思っていただけると幸いです。「RG」は「Red God」、「SS」は「サンデーサイレンス」です。
連産で生産されていた2頭、メイショウドトウとビッグゴールド。メイショウドトウは母父Affirmed(1975.2.21)、ビッグゴールドは母父Mr.Prospector(1970.1.28)、祖母父Raise a Cup(1971)、曾祖母父Tim Tam(1955)と、中島理論的にはアメリカンダミーが用いられています。
併せて確認しておくと、ステージチャンプは祖母父モデルフール(1963.4.2)、曾祖母父Red God(1954)、テイエムオペラオーは父オペラハウス(1988.2.24)、母父Blushing Groom(1974.4.8)、サンライズジェガーは母父トウショウボーイ(1973.4.15)、リンカーンは祖母父Sadler’s Wells(1981.4.11)と、中島理論的にダミー父系と判断される父系が用いられています。
結局、中島理論的には、純正なPhalaris4系掛けの馬は1頭もいないと判断されますね。
さて、メイショウサムソンと6頭の馬たちとの共通点を見出すならば、
- 母が前年産駒なし後の仔
- Sadler’s Wellsの血
- Princely Giftの血
というあたりになりますでしょうか。6頭中4頭が持ち合わせていた受胎条件、6頭中2頭が持ち合わせていたSadler’s Wellsの血、6頭中1頭が持ち合わせていたPrincely Gift(1951)の血。血統表上におけるPhalaris4系掛け馬の好走の条件とも思える母の受胎条件とダミーの血。メイショウサムソン、共に持ち合わせているのは確かです。
↑の表に倣って、メイショウサムソンの4代血統構成をアルファベットで表記すると、
馬名 (生年月日)[受胎条件] |
4代血統構成 |
---|---|
メイショウサムソン (2003.3.7)[初仔] |
A(SW系) A A(PG系) A |
ですね。今までの結果からいうと、好走のバックボーンは持ち合わせているという判断はできます。
また、メイショウサムソンについて強調できる点をさらに述べるならば、
- サンデーサイレンスの血を持っていない
- 牝系が小岩井の3号族フロリースカップ系
ということが挙げられます。中島御大も記事で示されていましたけれど、今年の皐月賞の上位3頭はSSの血を持たない、あるいは0化されている馬たちでした。合わせて、冬季のダートGIではありますが、フェブラリーS(GI)の上位3頭も、実はSSの血を持たない馬たちでした。日本のハーレムで求められている血が、徐々に変わってきたのかもしれません。
また、小岩井の3号族フロリースカップ(1904)系。この土着牝系の底力には本当に目を見張らされます。日本の気候風土に見事にマッチして、よくぞ輸入以来100年の時を重ねてきたものです。距離を乗り切るスタミナというのはボトムラインが脈々と伝えていくものなのでしょう。淀の長距離GIでもスペシャルウィーク(1995.5.2)、マチカネフクキタル(1994.5.22)が近10年の間に勝利を収めています。
ただ、それでも一抹の不安を覚える私は天の邪鬼なのでしょうか(笑)。メイショウサムソンの馬体や走りっぷりを見ると、クラシックディスタンスまでの距離、そして実は2000mくらいが適距離に思えて仕方がありません。祖母父サンプリンス(1969)、曾祖母父フォルティノ(1959.4.19)の軽快な部分が、実は強調されているのではないかとも思います。
しかし、そんな私の稚拙で浅はかな懸念など、吹き飛ばしてほしいと願っています。なにより、高橋茂忠先生に調教師としてのGI初勝利をプレゼントしてあげて欲しいものです。
最後に、今回の天皇賞・春出走予定馬のうち、メイショウサムソン以外のPhalaris4系掛けの馬を以下の表に示して、本日は終了致します。
馬名 (生年月日)[受胎条件] |
4代血統構成 |
---|---|
アドマイヤモナーク (2001.2.27)[2-2] |
A(SW系) A A A |
マイソールサウンド (1999.4.8)[初仔] |
A ★A(SS) A A(PG系) |
ユメノシルシ (2002.2.25)[不-4] |
A A A A |
という訳で、本日はPhalaris4系掛けの馬を確認致しました。では、逆にどのような4代血統構成を持っている馬が天皇賞・春で台頭するのか。そこが気になるところです。という訳で、明日以降に確認したいと思います。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。ではでは♪