サクラローレル(1991.5.8)。

春を迎えると、日々、馬の誕生日を思ってしまうオオハシでございます。という訳で、その日に生まれた馬を辿る企画を、今年2013年も毎週水曜日にお届けしたいと思いました。「自分と同じ年に生まれた馬を辿る」記事もありますが、こちらも併せてお届け致します。その第10回は「遅れてやって来た同期の桜」を。

サクラローレル 牡 栃栗毛 1991.5.8生 静内・谷岡牧場生産 馬主・(株)さくらコマース 美浦・境勝太郎厩舎→美浦・小島太厩舎

サクラローレル(1991.5.8)の4代血統表
Rainbow Quest
鹿毛 1981.5.15
種付け時活性値:0.25
Blushing Groom
栗毛 1974
Red God
栗毛 1954.2.15
Nasrullah 1940.3.2
Spring Run 1948
Runaway Bride
鹿毛 1962
Wild Risk 1940
Aimee 1957
I Will Follow
鹿毛 1975.4.29
▲Herbager
鹿毛 1956
Vandale 1943
Flagette 1951
Where You Lead
栗毛 1970.4.23
★Raise a Native 1961.4.18
Noblesse 1960
ローラローラ
栗毛 1985.3.23
仔受胎時活性値:1.25
Saint Cyrien
鹿毛 1980.4.22
種付け時活性値:1.00
Luthier
黒鹿毛 1965.3.22
Klairon 1952
Flute Enchantee 1950
Sevres
鹿毛 1974.2.9
Riverman 1969
Saratoga 1966.2.12
Bold Lady
栗毛 1974.2.27
仔受胎時活性値:0.50
ボールドラッドUSA
栗毛 1962.4.23
種付け時活性値:0.75
Bold Ruler 1954.4.6
Misty Morn 1952
Tredam
栗毛 1966
仔受胎時活性値:1.75
High Treason
栗毛 1951
種付け時活性値:1.50
Damasi
栗毛 1953
仔受胎時活性値:1.00

<5代血統表内のクロス:Nasrullah4×5>

サクラローレル(1991.5.8)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Rainbow Quest
(Red God系)
Saint Cyrien
(Luthier系)
ボールドラッドUSA
(Bold Ruler系)
High Treason
(Fairway系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
High Treason
(Eastern Grandeur)
4.50 従弟タイムパラドックス
(No.14)
2番仔
(2連産目)

*

第113回天皇賞・春(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 1 サクラローレル 牡5 58 横山典弘 3:17.8    34.7 484
[-12]
境勝太郎 3
2 4 ナリタブライアン 牡5 58 南井克巳 3:18.2 2.1/2 35.5 478
[-8]
大久保正陽 1
3 10 ホッカイルソー 牡4 58 蛯名正義 3:18.5 1.3/4 34.9 488
[0]
田中清隆 4
4 16 ハギノリアルキング 牡6 58 藤田伸二 3:18.8 2 35.8 478
[-2]
小林稔 9
5 7 マヤノトップガン 牡4 58 田原成貴 3:18.8 ハナ 36.1 456
[-4]
坂口正大 2

前哨戦の阪神大賞典(GII)で一騎討ちを演じたナリタブライアン(1991.5.3)とマヤノトップガン(1992.3.24)に人気が集まりましたが、この2頭に「待った」をかけたのは東の大器、サクラローレルでした。前走は自身1年1ヶ月の休養明けとなる中山記念(GII)でしたが、単勝9番人気をはね返しての快勝劇でした。勝ち運に乗っての第113回天皇賞・春、サクラローレルにとっては、GI初挑戦でした。レースの道中、集団後方に構えていたサクラローレルと横山典弘騎手。人気両頭が直線で先に抜け出した所を、外から強襲しました。栃栗毛の馬体が、淀の芝の上を力強く跳ねて行きました。ゴール板を先頭で駆け抜けた時には、ナリタブライアンに2馬身半の差を着けていました。ナリタブライアンにとっては、遅れてやって来た同期の桜、サクラローレル。ただただ、圧勝でした。

*

第41回有馬記念(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 6 サクラローレル 牡5 56 横山典弘 2:33.8    36.5 502
[+6]
境勝太郎 1
2 11 マーベラスサンデー 牡4 57 武豊 2:34.2 2.1/2 37.1 484
[-2]
大沢真 3
3 4 マイネルブリッジ 牡4 57 坂本勝美 2:34.3 1/2 37.0 500
[0]
伊藤正徳 14
4 8 ロイヤルタッチ 牡3 55 岡部幸雄 2:35.0 4 37.5 448
[0]
伊藤雄二 6
5 5 ヒシアマゾン 牝5 54 河内洋 2:35.0 クビ 37.0 500
[+8]
中野隆良 5

記録を辿れば「875億円」という、1レースにおける勝馬投票券の投票金額世界レコードの一戦だった、第41回有馬記念。レースは、当時の中長距離の上級重賞ではおなじみだったカネツクロス(1991.3.18)の先導により始まりました。そして2番手にマヤノトップガン、3番手にファビラスラフイン(1993.4.13)、4番手にマーベラスサンデー(1992.5.31)と続きました。上位人気馬が、サクラローレルより前の位置で競馬をしようとしていました。サクラローレルは、それらの馬を見る形で、悠然と、中段6~7番手の位置にいました。

カネツクロスの作り出した流れは、力のいる洋芝の馬場にしてはよどみない、平均ペース。レースはほぼ一団の構えで淡々と進み、残り1000mを切った付近から、動き始めました。3角。いったん5番手並びに位置を下げていたマーベラスサンデーが、馬群の外側の方で「すっ」と動きました。武豊騎手が、少しだけ押しながら、3番手まで順位を上げました。それを見て、サクラローレルも徐々に進出。横山典弘騎手が追い加減に馬群前方へ取り付こうとしました。前を見ると、マヤノトップガンは馬なりで2番手を楽走していました。4角。カネツクロスの逃げを先頭に、手応え良くマヤノトップガン、外を仕掛け気味にマーベラスサンデー、その後ろ4番手にサクラローレルがいました。

直線。あれ程良い感じで進んでいたマヤノトップガンに、思うような伸びはありません。力のいる洋芝に脚を取られるような形で、追い比べに遅れを取りました。その代わり、外からマーベラスサンデーが必死の逃げ込み態勢に入ろうとしています。中山の芝状態を考えて先に仕掛けた武豊騎手の作戦は、成功したかに思えました。しかし、もうひとつ外から桃色の勝負服に桃色のバンテージ、目立ついでたちのサクラローレルが、あっさりと、ほんとにあっさりと抜き去りました。中山の急坂を迎えたにも関わらず、推進力豊かに四肢は回転していました。前脚は高く上がり、それが大地を蹴る毎に、後続との差を引き離しました。ゴールした瞬間には、マーベラスサンデーとの差は2馬身と2分の1も着いていました。サクラローレル、全くの完勝でした。

サクラローレル、栃栗毛が暮れの中山の芝に映え、グランプリ史上初めて、サクラを冠に戴く馬名が勝ち馬として名前に刻まれました。

*

サクラローレルという馬は、1996年の年度代表馬という栄誉を蹄中に収めた馬であるにも関わらず、全条件戦を勝ち上がった珍しい馬でした。脚元の不安と闘いながら、一歩一歩、階段を上って行ったのでした。

私は、2度、サクラローレルを目の前で見ています。1度目は、1994年11月20日。私が初めて競馬場に行った日。淀でノースフライト(1990.4.12)がマイルCS(GI)を制した日の第7レース、900万条件戦の比良山特別に出走して勝利を収めたのが、小島太騎手騎乗のサクラローレルでした。その時はサクラバクシンオー(1989.4.14)の帯同馬でした。2度目は、1996年4月21日。そう、ナリタブライアンを豪快に差し切った上述の第113回天皇賞・春。横山典弘騎手騎乗の満5歳馬は、跳ねるようにして、馬場の真ん中を割って行きました。目を閉じれば、緑の芝と桃色の勝負服と栃栗毛の美しさが、私の脳裏に鮮やかに蘇ります。

サクラローレル。そんな記憶もあいまって、忘れられない名馬の1頭ですね。

  

では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

コメント

  1. つのだ より:

    お世話になっております。府中市つのだです。サクラローレルは当時の競馬仲間のあいだでも未完の大器として注目されていました。関東の秘密兵器として青葉賞3着に入った時は“ナリタブライアンと競馬になるかも”と期待したものです。秋には牝馬バースルートの大逃げに屈するなど決して順調ではなかった戴冠への道。関東のファンは古馬初戦の中山金杯圧勝で関西馬に一矢報いるのはこの馬。と皆思っていました。それだけによく応援した思い出があります。

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