ジャパンカップ(GI)の30年を辿る(其の参)。

ふと、ジャパンカップ(GI)の過去30回について、勝ち馬を中心に辿ってみようと思いました。中島みゆきさんの「地上の星」を聞きながら記事を作成していると、「ひとりプロジェクトX」という感じです。そんな訳で、その3回目は第7回から第9回。

ルグロリュー 牡 鹿毛 1984.2.18生 英国・ペトラブラッドストックエージェンシー社生産 馬主・S.ウォルフ氏 仏国・R.コレ厩舎

ルグロリュー(1984.2.18)の4代血統表
Cure the Blues
鹿毛 1978.4.27
種付け時活性値:1.25
Stop the Music
鹿毛 1970.3.23
Hail to Reason
黒鹿毛 1958.4.18
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Bebopper
鹿毛 1962.3.11
Tom Fool 1949.3.31
Bebop 1957
Quick Cure
栗毛 1971.1.27
Dr.Fager
鹿毛 1964.4.6
Rough’n Tumble 1948
Aspidistra 1954.3.25
Speedwell
鹿毛 1960.2.21
Bold Ruler 1954.4.6
Imperatrice 1938
La Mirande
鹿毛 1972.1.27
仔受胎時活性値:0.75
Le Fabuleux
栗毛 1961
種付け時活性値:0.50
Wild Risk
鹿毛 1940
★Rialto 1923
Wild Violet 1935
Anguar
鹿毛 1950
Verso 1940
La Rochelle 1945
La Magnanarelle
鹿毛 1961.5.17
仔受胎時活性値:0.50
Herbager
鹿毛 1956
種付け時活性値:1.00
Vandale 1943
Flagette 1951
La Malaguena
鹿毛 1954
仔受胎時活性値:1.50
Migoli
芦毛 1944
種付け時活性値:0.25
La Mirambule
鹿毛 1949
仔受胎時活性値:1.00

<5代血統表内のクロス:Variete(♀)=Vanille(♀)5×5(母方)>

ルグロリュー(1984.2.18)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Cure the Blues
(Hail to Reason系)
Le Fabuleux
(Wild Risk系)
Herbager
(Son-in-Law系)
Migoli
(Bois Roussel系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Cure the Blues 3.75 半弟ルグリエール
(No.11-d)
5番仔?
(前年産駒なし後?)
第7回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 11 ルグロリュー 牡3 55 A.ルクー 2:24.9 レコード 48.2 410
[不明]
R.コレ 3
2 1 サウスジェット 牡4 57 J-L.サミン 2:25.0 3/4 47.8 476
[不明]
S.A.ディマウロ 11
3 14 ダイナアクトレス 牝4 55 岡部幸雄 2:25.1 1/2 47.3 470
[0]
矢野進 9
4 6 トリプティク 牝5 55 A.S.クルーズ 2:25.4 1.3/4 47.7 492
[0]
P.L.ビアンコーヌ 1
5 12 ムーンマッドネス 牡4 57 P.J.エデリー 2:25.5 1/2 49.0 482
[不明]
J.L.ダンロップ 2

前年1986年の第6回はジュピターアイランド(1979.2.23)が満7歳とは思えないハツラツとした走りで府中芝2400m2分25秒0のレコード勝ちを収めましたが、1987年の第7回は本当に若い満3歳のルグロリューがそのレコードを0秒1破る2分24秒9で勝利を収めました。なお、ルグロリューの出走時の馬体重410kgは、現在も勝利馬の最軽量馬体重記録です-ちゃんと調べていませんが、実はジャパンカップ史上最軽量の出走馬でもあるのかもしれません-。最後の直線、内側で早めに抜け出したルグロリューを見ると、たしかに小さい。鞍上のアラン・ルクー騎手のアクションに応える明るめの鹿毛馬が、ピョコリンピョコリンとピッチ走法で跳ねる姿は、愛らしくもあります。けれど、最後の最後まで粘り切ったのは、サスガにベルリン大賞(独GI)、ワシントンDCインターナショナル(旧米GI)と、それまでに国際GI2勝を挙げていた強豪の矜持。サスガの走りでした。

*

ペイザバトラー 牡 鹿毛 1984.2.20生 米国・クロヴェリーファームズ生産 馬主・E.A.ガン氏 米国・R.フランケル厩舎

ペイザバトラー(1984.2.20)の4代血統表
Val de l’Orne
鹿毛 1972
種付け時活性値:0.75
Val de Loir
鹿毛 1959
Vieux Manoir
鹿毛 1947
Brantome 1931
Vieille Maison 1936
Vali
黒鹿毛 1954.4.6
Sunny Boy 1944
Her Slipper 1936
Aglae
鹿毛 1965.5.28
Armistice
鹿毛 1959.5.5
Worden 1949
Commemoration 1953
Aglae Grace
黒鹿毛 1947
Mousson 1934
Agathe 1936
Princess Morvi
栗毛 1975.3.28
仔受胎時活性値:2.00
Graustark
栗毛 1963.4.7
種付け時活性値:0.75
Ribot
鹿毛 1952.2.27
Tenerani 1944
Romanella 1943
Flower Bowl
鹿毛 1952
Alibhai 1938
Flower Bed 1946
Silana
鹿毛 1965
仔受胎時活性値:0.25
Silnet
鹿毛 1949
種付け時活性値:1.75
Fastnet 1933
Silver Jill 1939
Anabara
鹿毛 1955
仔受胎時活性値:0.25
Arbar
鹿毛 1944
種付け時活性値:0.50
Flying Carpet
栗毛 1943
仔受胎時活性値:0.75

<5代血統表内のクロス:なし>

ペイザバトラー(1984.2.20)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Val de l’Orne
(Blandford系)
Graustark
(Ribot系)
Silnet
(Pharos系)
Arbar
(Tourbillon系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Silnet
(Fastnet)
3.25 祖母がロワイヤリュー賞の勝ち馬
(No.9-e)
3番仔?
(2連産目?)
第8回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 16 ペイザバトラー 牡4 57 C.マッキャロン 2:25.5    47.6 464
[不明]
R.フランケル 9
2 5 タマモクロス 牡4 57 南井克巳 2:25.6 1/2 47.6 450
[-2]
小原伊佐美 1
3 8 オグリキャップ 牡3 55 河内洋 2:25.8 1.1/4 47.7 494
[+2]
瀬戸口勉 3
4 7 マイビッグボーイ せん5 57 R.ロメロ 2:25.8 アタマ 48.0 506
[不明]
C.マゴーイ 4
5 6 トニービン 牡5 57 J.リード 2:25.9 1/2 47.9 460
[不明]
L.カミーチ 2

1988年の第8回。戦前の外国馬の目玉は、その年の凱旋門賞(仏GI)を含むGI6勝馬トニービン(1983.4.7)。後に府中芝2400mを得意とする仔どもたちを送り込んだトニービンでしたが、自身はレース中に骨折していたことも響き、5着。いっぽう、日本馬は芦毛対決の第2ラウンドが注目の的。タマモクロス(1984.5.23)とオグリキャップ(1985.3.27)。彼らは、前走天皇賞・秋(GI)において1と4分の1馬身差で1着、2着だった勝負が、そのまま1と4分の1馬身差で2着、3着にスライド。「ならば勝ち馬は?」と見れば、米国でレッドスミスH(GII)勝ちしかなかった伏兵ペイザバトラー。3角から4角、外を回ったタマモクロスの内1頭分の位置から上がって行くと、直線ではタマモクロスとの競り合いを避けるかのようにして、内々へ切れ込みながら脚を伸ばしました。名手クリス・マッキャロン、自らの騎乗馬とライバルの力量を踏まえ、最善策を取った結果でした。果たせるかな、ペイザバトラー、決勝点では2分の1馬身、タマモクロスに先んじていました。

*

ホーリックス 牝 芦毛 1983.10.7生 新国・G.W.ド・グルシー氏生産 馬主・G.W.ド・グルシー氏 新国・D.J.オサリバン厩舎

ホーリックス(1983.10.7)の4代血統表
Three Legs(GB)
芦毛 1972
種付け時活性値:0.625
Petingo
鹿毛 1965
Petition
黒鹿毛 1944
Fair Trial 1932
Art Paper 1933
Alcazar
栗毛 1957
Alycidon 1945
Quarterdeck 1947
Teodora
芦毛 1963
Hard Sauce
黒鹿毛 1948
Ardan 1941
Saucy Bella 1941
Tellastory
芦毛 1957
Tulyar 1949
King’s Story 1950
Malt
黒鹿毛 1978.11.12
仔受胎時活性値:1.00
Moss Trooper(USA)
鹿毛 1972.4.15
種付け時活性値:1.375
Levmoss
鹿毛 1965
Le Levanstell 1957
Feemoss 1960
Forest Friend
青毛 1966
Linacre 1960
Belle Sauvage 1949
Frill
栗毛 1969.10.27
仔受胎時活性値:2.00(0.00)
Agricola(GB)
栗毛 1956
種付け時活性値:1.125
Precipitation 1933
Aurora 1936 ♀
Froth
黒鹿毛 1954
仔受胎時活性値:1.50
Faux Tirage(GB)
鹿毛 1946
種付け時活性値:1.875
Home Brew
鹿毛 1947
仔受胎時活性値:1.50

<5代血統表内のクロス:Aurora(♀)5×4、Big Game5×5(母方)>

ホーリックス(1983.10.7)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Three Legs
(Fairway系)
Moss Trooper
(Tourbillon系)
Agricola
(Hurry On系)
Faux Tirage
(Blandford系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Faux Tirage
(Commotion)
6.00 or 4.00 半弟ヒットザマーク
(No.10-d)
初仔
第9回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 ホーリックス 牝6 55 L.A.オサリバン 2:22.2 世界
レコード
47.9 492
[不明]
D.J.オサリバン 9
2 3 オグリキャップ 牡4 57 南井克巳 2:22.2 クビ 47.6 496
[0]
瀬戸口勉 2
3 14 ペイザバトラー 牡5 57 C.マッキャロン 2:22.7 3 47.2 460
[不明]
R.フランケル 6
4 6 スーパークリーク 牡4 57 武豊 2:22.7 クビ 48.1 524
[+4]
伊藤修司 1
5 8 ホークスター 牡3 55 R.ベーズ 2:22.9 1 48.8 472
[不明]
R.マッカナリー 3

元号が昭和から平成に変わった1989年、第9回は芝12F2分22秒8というワールドレコードを持っていたホークスター(1986.2.19)の参戦もあり、世界の強豪と日本馬のスピード比べも楽しみとされました。

けれど、まさか芝2400mの世界記録が叩き出されようとは、戦前、誰が想像したでしょうか。いえ、サスガに誰も想像だにしなかったのではないでしょうか。

第9回ジャパンカップ(GI)の1F毎のラップタイムとラップの累計タイム
1F毎の
ラップ
13.0-11.1-11.5-11.4-11.5-12.0-12.0-11.6-11.7-12.2-11.9-12.3
ラップの
累計タイム
13.0-24.1-35.6-47.0-58.5-1:10.5-1:22.5-1:34.1-1:45.8-1:58.0-2:09.9-2:22.2

ジャパンカップ戦前まで4連勝中だったイブンベイ(1984.3.22)が阿呆みたいにブンブン飛ばした結果、1800mの通過が1分45秒8と当時の日本レコードよりも速く、2200mの通過は現在の日本レコードよりも速い2分9秒9というラップになっています。そうして、ゴールに辿り着いてみれば、2枠2頭、芦毛の満6歳牝馬と満4歳牡馬が刻んだ走破時計は「2分22秒2」。それまでの府中芝2400mのレコードが、上述のルグロリューによる2分24秒9。一気に2秒7も縮めてしまった、驚がくかつ超絶の世界レコードでした。

  

南半球のスーパーメアの脅威の粘り腰と、琵琶湖畔におわした日本男子の愚直なまでの誠実な走りと、後に続いた馬たちの懸命な姿。

このレースをライブでご覧になった方は、果たして、どのような感慨を持たれたのでしょうか。

そうか。

それは、ライブでご覧になった方だけの、競馬者としての、「宝物」なのかも知れませんね。

  

では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

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