四方山話-其の弐-。

◆Darby Dan Farm◆

「過去10年の”キング・ジョージ”(英GI)連対馬の4代血統構成について。」というエントリに、ダービーダンファーム(Darby Dan Farm)-トップページは音が出るので注意-の話題を出して頂いて、ちょこっと調べてみると、同牧場の日本競馬に対する影響力の強さを感じました。

まずは、創業者ジョン・W.ガルブレス氏の生産所有馬だったRoberto(1969.3.16)。ちらっと確認したところ、ガルブレス氏はメジャーリーグのピッツバーグ・パイレーツのオーナーでもあったようで、同チームのスター選手であったロベルト・クレメンテ(Roberto Clemente)からその名をもらい受けたということです。英ダービー(GI)馬であるRobertoは、20世紀の英国最強馬と喧伝されるBrigadier Gerard(1968.3.5)に対して、1972年のベンソン&ヘッジスGC(現英インターナショナルS、GI)において生涯唯一の敗戦を付けた馬としても知られていますね。さて、Roberto系はそのスピードと持久力の確かさで日本のクラシックディスタンスで活躍馬を続出しているのは言わずもがな。リアルシャダイ(1979.5.27)ライスシャワー(1989.3.5)シャダイカグラ(1986.3.23)イブキマイカグラ(1988.2.24)などで先鞭をつけたそのブーム、後に続いたのがやはりダービーダンファームの生産馬であるブライアンズタイム(1985.5.28)でした。 

ブライアンズタイムは今は無き早田牧場の輸入馬ですけれど、その輸入時のエピソードはよく知られていますね。本来は、同い年のいとこで同じくダービーダンファームの生産馬だった北米芝王者のサンシャインフォーエヴァー(1985.3.14)を輸入しようとしたところ、折り合いが付かず、代替として購入されたのがブライアンズタイムでした。しかし、代替の扱いに発奮したのか、ブライアンズタイムは恐るべき遺伝力を見せ、初年度から3冠馬ナリタブライアン(1991.5.3)、オークス(現JpnI)馬チョウカイキャロル(1991.3.26)を輩出。以後もサニーブライアン(1994.4.23)タニノギムレット(1999.5.4)という日本ダービー(現JpnI)馬をはじめ、ジーワン勝ち馬を多数輩出しています。また、タニノギムレットからはウオッカ(2004.4.4)という才媛が生まれました。

そして、日本のRoberto系の最強馬として忘れてはならない栗毛馬がいます。グラスワンダー(1995.2.18)。同馬は「フィリップス・レーシング・パートナーシップ&ジョン・フィリップス」という生産名義ですが、ジョン・フィリップス氏は、創業者であるガルブレス氏の孫で、現在のダービーダンファームのオーナーですね。ダービーダンファームの歴史のページにもグラスワンダーがしっかり紹介されています。グラスワンダーは朝日杯3歳S(現朝日杯FS、JpnI)を1分33秒6の快時計で制した際に「凄い馬だ」と素直に思いました。その後は紆余曲折があったものの有馬記念(GI)連覇、宝塚記念(GI)完勝とグランプリ3連勝を飾り「非根幹距離のジーワンに強いRoberto系」らしさを見せつけてくれました。特にグラスワンダーが制した宝塚記念は現地で観戦していたのですが、1週目のホームストレッチでスペシャルウィーク(1995.5.2)をマークする姿を見て「あ、今日はやられてしまう」と、鞍上の的場均騎手(現調教師)込みで思ったものです。

#余談。ナリタブライアンが日本ダービーを制した際に「ロベルトの3代目の走りを見に来た」と言って来日されたダービーダンファームの関係者さんがいらっしゃったと思うのですが、それがジョン・フィリップス氏だったかどうかは記憶が定かではありません。

また、日本馬の母方に潜入して良い仕事をしたダービーダンファーム生産馬がいます。シャトーゲイ(1960.2.29)。世界レコードを5回記録したSwaps(1952.3.1)は種牡馬としての大部分の時間をダービーダンファームで過ごしました。その折の代表産駒がケンタッキーダービー(現米GI)父仔制覇を遂げ、ベルモントS(現米GI)を制して米2冠馬となったシャトーゲイでした。「シャトーゲイ」と聞いて、2頭の1984年産馬のブルードメアサイアーと思われた方は、サスガです。タマモクロス(1984.5.23)メリーナイス(1984.3.22)。中島理論的には共にその父満8歳時の0交配を受けた活躍馬、母方からHyperion(1930.4.18)につながる血脈を受けて、底力を注入されていたのでした。

ほかにも現代血統の重要な構成因子となっているGraustark(1963.4.7)&His Majesty(1968.4.15)の全兄弟もダービーダンファームの生産馬ですね。兄Graustarkは直仔ジムフレンチ(1968.4.26)を経由して、今のところRibot(1952.2.27)系唯一の日本ダービー馬であるバンブーアトラス(1979.4.27)を送り込んでいます。他にも同じく直仔ラディガ(1969.5.18)がオークス馬ケイキロク(1977.4.28)を送り込みました。また、弟His Majestyは直仔Pleasant Colony(1978.5.4)、直孫Pleasant Tap(1987.5.8)のラインからタップダンスシチー(1997.3.16)を送り込みました。His Majestyのラインには、他にも輸入種牡馬のタイトスポット(1987.2.24)がいます。タイトスポットの代表産駒であるブラボーグリーン(1994.5.21)が制した1998年の京阪杯(GIII)、実は幸英明騎手の重賞初制覇でした。合わせて、His Majestyは20世紀最後半の大種牡馬デインヒル(1986.3.26)の母父でもありますね。

なお、Graustark&His Majesty兄弟の父であるRibotの米国時代の供用地がダービーダンファームでした。Ribotは本来5年リースの契約で、供用後は伊国に戻るはずでしたが、気性難が悪化していた為、ダービーダンファームが終の棲家となりました。前述のSwapsと合わせて、1952年生まれの「米国最強」「欧州最強」と目された同い年2頭が同じ場所にいたのですから、これは凄い。ほかにもダービーダンファームはSea-Bird(1962.3.8)を150万ドルの高値でリースしたり、Sword Dancer(1956.4.24)を供用したりしました。Sea-Bridからは米2冠馬であるLittle Current(1971.4.5)-Sea-Bridが満8歳時の0交配馬-がダービーダンファーム産馬として送り込まれています。

総体的に日本の競馬に良く合う感じがするダービーダンファームの生産馬たち。これからも、少なからず影響を与え続けるのでしょうね。

◆英ダービーとケンタッキーダービーの両方を制したオーナー◆

上の項ともつながる内容ですが、切り分けておきます。

ダービーダンファームの創業者であるジョン・W.ガルブレス氏は、Robertoとシャトーゲイにより、英ダービーとケンタッキーダービーを制したオーナーになりました。英語版Wikipediaのガルブレス氏の項などによると、このダブル制覇を遂げたオーナーは、ほかにはポール・メロン氏、マイケル・テイバー氏-スーザン・マグナーさんとの共同所有含む-、サウジアラビアのアーメド・ビン・サルマン殿下しかいないということです。つまりは4者しか達成していない、なかなかに難しい記録です。

ダブル制覇を遂げた馬主順に、各々の持ち馬を列記しておきますと、

英ダービーとケンタッキーダービーの両方を制したオーナー
馬主 英ダービー勝ち馬(生年月日) ケンタッキーダービー勝ち馬(生年月日)
ジョン・W.ガルブレス氏 Roberto(1969.3.16) シャトーゲイ(1960.2.29)
ポール・メロン氏 Mill Reef(1968.2.23) Sea Hero(1990.3.4)
マイケル・テイバー氏 Galileo(1998.3.30)
High Chaparral(1999.3.1)
サンダーガルチ(1992.5.23)
アーメド・ビン・サルマン殿下 オース(1996.4.22) ウォーエンブレム(1999.2.20)

ほかのオーナーが軒並み1990年代以降に達成しているのに、ガルブレス氏は1970年代初頭にすでに達成しています。しかも両レース共にオーナーブリード馬で。むぅ、素晴らしいですね。

勢い込んで書きましたが、エネルギー切れの模様です(苦笑)。ではでは、今日はこのへんで。

コメント

  1. much_better より:

    ベンソン&ヘッジズで最近見たお笑いニュースはこれです(自分のブログで取り上げようかと思いつつ、機会がありませんでした)。
    自分の子供にタバコの銘柄の名をつける人がいるそうな。
    http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2422426/3163450
    ベンソン&ヘッジズがタバコの銘柄だというのはこのニュースで知ったのですが、
    タバコ銘柄のレースなんてのは、特にヨーロッパでは、もう出来ないでしょうね。
    インターナショナルSのスポンサーは読み方に困るJuddmonteです。

    ついさっき終わったアスタルテ賞も今年からはPrix Rothschildなようですね。
    Wikipedia日本版では既にロートシルト賞という読みを書かれていますが、これでいいのか迷うところです。
    取りあえずこれで行くことになるのでしょうが、公式見解(JRAが書けば公式なんだろうと思っています、ピルサドスキーの教訓)が出るのを待つしかないですね。

  2. オオハシ より:

    ◎much_better様
    いつもお世話になっております。

    >ベンソン&ヘッジズ
    スゴイところからネタを拾ってこられますね。いや、世の中には色んな親御さんがいらっしゃるもので。かつて自分の子どもに「悪魔」と名付けようとした日本人の方を思い出しました(^^;)

    >Prix Rothschild
    思わず私も書いてしまいました。ええ、Natagoraが出走していたということもありますけれど。

    JRAの公式見解も人によっては噛み付かれていますから、ね。
    ピルサドスキーなんかも「なんでピウスツキじゃないんだ」って、どこぞやの方がおっしゃっていたような。

    まま、私は大勢に流されて行くだけです(^^;)

    ではでは、わざわざのコメント、誠にありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました