前回は、「『Phalaris系4本掛け』の配合馬について-天皇賞・春(GI)編-。」ということで、過去20年の天皇賞・春における、Phalaris4本掛けの馬の連対状況を確認してみました。その結果は「40分の7」でした。
という訳で今回は、天皇賞・春においてはどのような4代血統構成(父、母父、祖母父、曾祖母父)の持ち主が台頭するのかを確認してみたいと思います。
過去20年の連対馬40頭について、その4代血統構成を表のページ同様にアルファベットで記すと……、
年次 |
1着馬 (生年月日)[受胎条件] |
1着馬の 血統構成 (資質固定指数) |
2着馬 (生年月日)[受胎条件] |
2着馬の 血統構成 (資質固定指数) |
---|---|---|---|---|
1987 |
ミホシンザン (1982.4.16) [2-2] |
B ★B C C (0.66) |
アサヒエンペラー (1983.4.3) [2?-?] |
★C A A F (0.50) |
1988 |
タマモクロス (1984.5.23) [4-4] |
★A C ★C B (0.33) |
ランニングフリー (1983.4.20) [2?-2?] |
A A ★E G (0.50) |
1989 |
イナリワン (1984.5.7) [4-7] |
★A A A E (0.66) |
ミスターシクレノン (1985.4.15) [2-4?] |
A A F A (0.75) |
1990 |
スーパークリーク (1985.5.27) [2-2] |
A C A ★C (0.66) |
イナリワン (1984.5.7) [4-7] |
★A A A E (0.66) |
1991 |
メジロマックイーン (1987.4.3) [5-5] |
★E(18) F B ★E(12) (0.25) |
ミスターアダムス (1985.4.14) [2-2] |
A A(PG系) F A (0.75) |
1992 |
メジロマックイーン (1987.4.3) [5-5] |
★E(18) F B ★E(12) (0.25) |
カミノクレッセ (1987.5.30) [3-3] |
A C B F (0.25) |
1993 |
ライスシャワー (1989.3.5) [4-4] |
A A A F(8) (1.00) |
メジロマックイーン (1987.4.3) [5-5] |
★E(18) F B ★E(12) (0.25) |
1994 |
ビワハヤヒデ (1990.3.10) [3-4] |
A ★A● G F (0.33) |
ナリタタイシン (1990.6.10) [4-4] |
A B A C (0.50) |
1995 |
ライスシャワー (1989.3.5) [4-4] |
A A A F(8) (1.00) |
ステージチャンプ (1990.5.17) [初仔] |
A A y A(RG) (0.75) |
1996 |
サクラローレル (1991.5.8) [2-2] |
A(RG系) E A A (0.75) |
ナリタブライアン (1991.5.3) [4-5] |
A ★A● G F (0.33) |
1997 |
マヤノトップガン (1992.3.24) [4-6] |
A A(RG系) ★C C (0.66) |
サクラローレル (1991.5.8) [2-2] |
A(RG系) E A A (0.75) |
1998 |
メジロブライト (1994.4.19) [3-6] |
A A B A (0.75) |
ステイゴールド (1994.3.24) [2-2] |
A(SS) C A A(PG) (0.75) |
1999 |
スペシャルウィーク (1995.5.2) [5-5] |
★A(SS) A C B (0.33) |
メジロブライト (1994.4.19) [3-6] |
A A B A (0.75) |
2000 |
テイエムオペラオー (1996.3.13) [不-7] |
A(SW系) A(RG系) A A (1.00) |
ラスカルスズカ (1996.4.17) [4-4] |
A ★x z A (0.50) |
2001 |
テイエムオペラオー (1996.3.13) [不-7] |
A(SW系) A(RG系) A A (1.00) |
メイショウドトウ (1996.3.25) [3-8] |
A ★x A A (0.75) |
2002 |
マンハッタンカフェ (1998.3.5) [流-5] |
A(SS) B ★C F (0.25) |
ジャングルポケット (1998.5.7) [4-4] |
A A C C (0.75) |
2003 |
ヒシミラクル (1999.3.31) [3-3] |
C A A A (0.75) |
サンライズジェガー (1998.5.19) [不-2] |
A A(PG系) A A (1.00) |
2004 |
イングランディーレ (1999.5.21) [5-7] |
★A A A G (0.66) |
ゼンノロブロイ (2000.3.27) [5-5] |
A(SS) x A C (0.50) |
2005 |
スズカマンボ (2001.4.28) [3-3] |
A(SS) x A B (0.50) |
ビッグゴールド (1998.3.21) [4?-4?] |
A x x y (0.50) |
2006 |
ディープインパクト (2002.3.25) [7-7] |
A(SS) A F A (0.75) |
リンカーン (2000.3.18) [初仔] |
A(SS) A A(SW) ★A (1.00) |
以上の結果です。はは、過去20年の勝ち馬について、4代血統表は必ずフォローできているところが、我ながらエライ。あと、地味にカミノクレッセのフォローができているところも、中島理論使いとしてエライ(笑)
それはさておき、↑の表を見るにつけ、「淀の長距離GIは、やはりHampton系の血が大切ということになるのかなぁ」という印象を持ちました。延べ40頭のうち13頭がHampton系を持ち合わせていました。↑の表では「C」を持っている馬ですね。
#過去にはニックス(Phalaris系×Hampton系)、ニックス(Hampton系×St.Simon系)、ニックス(Hampton系×Sterling系、Phalaris系×Sterling系)なんて記事も書いていました。よろしければ、ご参照ください。
という訳で、今年の出走予定馬18頭のうち、4代血統構成にHampton(1872)系を持ち合わせているのは、
- アイポッパー(2000.3.21) → C A(SS) A y
- アドマイヤタイトル(2002.2.25) → A(SS系) A G C
- ネヴァブション(2003.2.19) → A(SS系) ★A C C
の3頭ですね。むぅ、前哨戦である阪神大賞典(GII)の勝ち馬と日経賞(GII)の勝ち馬の名前が挙がりましたか(笑)。アイポッパーは2003年の勝ち馬ヒシミラクルと同様にサッカーボーイ(1985.4.28)の仔ですね。また、ネヴァブション。いまや見かけることが難しくなった、母方に2本Hampton系を配されている活躍馬です。母方に2本Hampton系を配されている過去の連対馬は、ミホシンザン、タマモクロス、スーパークリーク、マヤノトップガン、ジャングルポケットと5頭いますね。母の受胎条件と共に、やはりアイポッパーとネヴァブションの両馬には、必ずシルシをまわさないといけないように思います。
また、Hampton系に次いで、連対馬が持ち合わせていた血はSt.Simon(1881)系。延べ40頭のうち12頭が持ち合わせていました。↑の表では「B」を持っている馬ですね。 今年の出走予定馬18頭のうち、4代血統構成にSt.Simon系を持ち合わせているのは、
- ウイングランツ(2000.4.8) → A(SS系) x ◆B A
- デルタブルース(2001.5.3) → A(SS系) A ★B A
- トウショウナイト(2001.5.29) → ★x ★B ◆A G
- ファストタテヤマ(1999.5.30) → A(SS系) B A ★E
の4頭でした。むぅ、長距離重賞で実績を残している馬たちが残りますね。というか、出走予定のダンスインザダーク(1993.6.5)産駒4頭のうち3頭の名前が挙がっています(笑)。ウイングランツは2年前のダイヤモンドS(GIII、現JpnIII)の勝ち馬-今をときめく松岡正海騎手の初重賞制覇-、デルタブルースは言わずもがなのメルボルンC(豪GI)勝ち馬にして菊花賞(GI、現JpnI)馬、トウショウナイトはアルゼンチン共和国杯(GII、現JpnII)の勝ち馬、ファストタテヤマは京都新聞杯(GII、現JpnII)の勝ち馬で菊花賞2着馬ですね。
ところで、同じ淀の長距離GIである菊花賞での活躍に比べて、天皇賞・春での活躍が思ったほど見られないダンスインザダークの仔。1ハロンの違いに差異があるのか、それとも何か別の理由が潜んでいるのか。なお、ダンスインザダーク産駒の天皇賞・春における最高着順は2003年のダイタクバートラム(1998.4.2)による3着です。また、↑の表からも分かるように、SSの直孫はまだ天皇賞・春を勝っていません。
あと、St.Simon系と同じく40頭中12頭が持ち合わせていた血がBlandford(1919.5.26)系。↑の表では「F」を持っている馬ですね。 今年の出走予定馬18頭のうち、4代血統構成にBlandford系を持ち合わせているのは、
- エリモエクスパイア(2003.5.12) → x A A(RG系) F
- スウィフトカレント(2001.4.9) → A(SS) x F E
の2頭でした。エリモエクスパイア。母の初仔という受胎条件の良さとダイヤモンドS2着の長距離実績。しかし、ダイヤモンドSの53キロから56キロに斤量が増えた前走の日経賞10着をどう取るのかが問題ですね。スウィフトカレント。アサクサデンエン(1999.3.22)の弟、母方は底力満点の組み合わせです。ただ、自身は中距離で良さを見せているところを見ると、母父Machiavellian(1987)の影響もあるのかな、というところです。
あと「2000年代に入ってからの結果」を見ると気付くことがありますね。
- テイエムオペラオーにより、血統表上におけるPhalaris4本掛けの馬が初めて天皇賞・春を制した
- 母父にRaise a Native系を持ち合わせている馬の連対がなされている
という2点ですね。改めて表にすると、よく分かります。
1点目については、過去20年の結果しか見ていませんので、もしかしたら、もっと遡ればPhalaris(1913)4本掛けの馬がいるかもしれません。けれど、おそらくは皆無でしょう。遡れば遡るほどに、血統表上の組み合わせにおいて、↑の表における「A」の出現度合いが現在よりも少なくなるはずです。 Phalaris4本掛けの馬については、すでに前回の「『Phalaris系4本掛け』の配合馬について-天皇賞・春(GI)編-。」で述べておりますので、詳しくは参照願います。過去の結果を顧みると、今回の天皇賞・春におけるPhalaris4本掛けの出走予定馬4頭のうち、期待が持てそうなのは、結局メイショウサムソン(2003.3.7)ただ1頭のようです。
2点目については、2000年代の連対馬14頭のうち5頭が、母父にRaise a Native(1961)系を持っています。ただ、母方というのがポイントで、直父系に持つ馬は1頭もいません。連対馬が増えている原因としては、海外、特に米国からの輸入繁殖が父にRaise a Native系を持ち合わせていることが多いということが挙げられます。また、最近の長距離重賞は、ヨーイドンの競馬に対応できる一瞬の切れ味とスピードが求められている故に、米国血脈の台頭がなされているとも思います。
今年の出走予定馬のうち、4代血統構成のいずれかにRaise a Native~Native Dancer(1950.3.27)系を持つ馬を挙げておくと、
- ウイングランツ(2000.4.8) → A(SS系) x ◆B A
- エリモエクスパイア(2003.5.12) → x A A(RG系) F
- サクラキングダム(2002.5.18) → A(RG系) E x y
- スウィフトカレント(2001.4.9) → A(SS) x F E
- ダークメッセージ(2003.2.14) → A(SS系) A x ★A
- トウカイトリック(2002.2.26) → x A A z
- トウショウナイト(2001.5.29) → ★x ★B ◆A G
- マツリダゴッホ(2003.3.15) → ★A(SS) A x A
以上の8頭です。母父にRaise a Native系を持っているのは、母父Alysheba(1984.3.23)のウイングランツ、母父Machiavellianのスウィフトカレントの2頭です。上位人気が予想されるトウカイトリック、トウショウナイトは、果たしてジンクスを破ることができるでしょうか。ちなみに、昨年の菊花賞(GI、現JpnI)を制したソングオブウインド(2003.2.20)は、史上初めての直父系Raise a Native系の菊花賞馬でした。
あと、かつては「淀の長距離GIといえばリアルシャダイ」と言われたように、リアルシャダイ(1979.5.27)を父に持つ馬ライスシャワー、ステージチャンプ、サンライズジェガー、母父に持つ馬イングランディーレの都合4頭で延べ5回連対していました。また、1990年代半ばからのRed God(1954)系の血-特にBlushing Groom(1974.4.8)-の「底力注入」ぶりに驚いてみたりしました。Red Godを4代血統構成に持つ馬は、ステージチャンプを皮切りとしてサクラローレル、マヤノトップガン、テイエムオペラオーと4頭で延べ6回の連対を果たしています。
ちょっと確認しすぎましたので、分かり難くなりましたね。結局、4代血統構成に多様な血を持つ馬が、やはり上位に来るということを確認したかっただけでした。とりあえず、確認したことをざっくりまとめておくと、
- 天皇賞・春では4代血統構成にHampton系を持つ馬に注意
- Hampton系に準じてSt.Simon系、Blandford系を持つ馬にも注意
- 2000年代に入って初めてPhalaris4本掛けの1着馬-テイエムオペラオー-が現れた
- 2000年代に入ってRaise a Native系を持つ馬の活躍も目立ち始めている
というところですね。結局、箇条書きにしたら、これだけかよ(笑)。あいすみません。
ではでは、連日の長文にお付き合い頂き、誠にありがとうございました♪
コメント
ネヴァブションの血統がいい感じですね。
イナリワンやヒシミラクルと言った
「Mill Reefの血を引くステイヤー」という雰囲気がありますし
母の血統構成がマヤノトップガンの母みたいな雰囲気もあります。
あとはちょっと馬場が渋ってくれないかな、と。
追伸:B-Skillのページをご覧になって頂きありがとうございました。
手違いで頂いたコメントが消えてしまいました。
申し訳ありません・・・
◎すみのえ様
いつもお世話になっております。
色々調べていく内に、やはりネヴァブションが良いなぁと、私も思いました。すみのえさんblogの見解を拝見して、その意をさらに強めました(笑)
母父であるMill Reefの血は天皇賞・春で良い結果を残していますし、また仰るように母がマヤノトップガンを思い起こさせますね。
母系も3代母がPistol Packerと筋が通っています。改めて調べると、1971年の凱旋門賞のワンツーを決めた馬がネヴァブションの母系に配されているんですね。また、地味にハワイアンイメージやメイワキミコと同牝系でもありますね(笑)
まま、いずれにせよ、ネヴァブション、期待したいと思います。
あと、B-Skillのコメントについてはお気遣いなく。致し方なしです。後続の記事、楽しみにしております。
ではでは、コメントありがとうございました♪