春を迎えると、日々、馬の誕生日を思ってしまうオオハシでございます。という訳で、その日に生まれた馬を辿る企画を、今年2014年も毎週水曜日にお届けしたいと思います。その第10回は「平成最初のJRA年度代表馬」を。
イナリワン 牡 鹿毛 1984.5.7生 門別・山本実儀氏生産 馬主・保手浜弘規氏 大井・福永二三雄厩舎→美浦・鈴木清厩舎
★ ミルジョージ 鹿毛 1975.4.12 種付け時活性値:0.00 |
Mill Reef 鹿毛 1968.2.23 |
Never Bend 鹿毛 1960.3.15 |
Nasrullah 1940.3.2 |
Lalun 1952 | |||
Milan Mill 鹿毛 1962.2.10 |
Princequillo 1940 | ||
Virginia Water 1953.4.18 | |||
Miss Charisma 鹿毛 1967 |
Ragusa 鹿毛 1960 |
Ribot 1952.2.27 | |
Fantan 1952 | |||
マタティナ 鹿毛 1960 |
Grey Sovereign 1948 | ||
Zanzara 1951 | |||
テイトヤシマ 鹿毛 1970.5.12 仔受胎時活性値:1.25 |
ラークスパー 栗毛 1959 種付け時活性値:0.50 |
Never Say Die 栗毛 1951 |
Nasrullah 1940.3.2 |
Singing Grass 1944 | |||
Skylarking 栗毛 1950 |
★Precipitation 1933 | ||
Woodlark 1944 | |||
ヤシマジェット 鹿毛 1960.6.2 仔受胎時活性値:0.25 |
ソロナウェー 鹿毛 1946 種付け時活性値:1.25 |
Solferino 1940 | |
Anyway 1935 | |||
ヤシマニシキ 鹿毛 1948.6.4 仔受胎時活性値:0.75 |
セフト 鹿毛 1932 種付け時活性値:1.75 |
||
神正 栗毛 1938.4.10 仔受胎時活性値:0.25 |
<5代血統表内のクロス:Nasrullah4・5×4>
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
★ミルジョージ (Mill Reef系) |
ラークスパー (Never Say Die系) |
ソロナウェー (Fairway系) |
セフト (The Tetrarch系) |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 母の何番仔? |
セフト (Agnes Velasquez) |
2.50 |
(No.5-h 種正系) |
7番仔 (4連産目) |
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 4F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | イナリワン | 牡5 | 58 | 武豊 | 3:18.8 | レコード | 47.9 |
452 [+8] |
鈴木清 | 4 |
2 | 13 | ミスターシクレノン | 牡4 | 58 | 河内洋 | 3:19.6 | 5 | 49.2 |
494 [0] |
小林稔 | 16 |
3 | 4 | スルーオダイナ | 牡5 | 58 | 岡部幸雄 | 3:20.2 | 3.1/2 | 49.5 |
458 [0] |
矢野進 | 1 |
4 | 8 | ワコーリューオー | 牡4 | 58 | 南井克巳 | 3:20.2 | ハナ | 49.0 |
552 [+4] |
伊藤雄二 | 11 |
5 | 16 | ランニングフリー | 牡6 | 58 | 菅原泰夫 | 3:20.3 | 1/2 | 49.7 |
446 [-10] |
本郷一彦 | 2 |
「平成の盾男」による、天皇賞・春4連覇の始まりのレースでした。いかな騎乗馬に恵まれたとしても、淀芝3200mのGIを4連覇って(^^;)
イナリワンは中央転厩の後、すばるS(OP)4着、阪神大賞典(GII)5着と、真価を発揮できずにいたところ、この大舞台でテン乗りの武豊騎手に託されたのでした。
そうして、終わってみれば、独走の5馬身差。3分18秒8のコースレコードのオマケも付いて来ました。これは強い。
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 4F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | イナリワン | 牡5 | 57 | 武豊 | 2:14.0 | 49.1 |
452 [0] |
鈴木清 | 2 | |
2 | 5 | フレッシュボイス | 牡6 | 56 | 松永幹夫 | 2:14.1 | クビ | 48.3 |
456 [-14] |
境直行 | 10 |
3 | 1 | ミスターシクレノン | 牡4 | 56 | 河内洋 | 2:14.7 | 3.1/2 | 49.3 |
490 [-4] |
小林稔 | 7 |
4 | 4 | ダイナカーペンター | 牡5 | 57 | 丸山勝秀 | 2:15.0 | 1.3/4 | 50.5 |
468 [0] |
増本豊 | 9 |
5 | 13 | バンブーメモリー | 牡4 | 56 | 松永昌博 | 2:15.4 | 2.1/2 | 50.1 |
488 [-6] |
武邦彦 | 8 |
天皇賞・春を制した後、返す刀で挑んだ宝塚記念。あえぐ1番人気馬ヤエノムテキ(1985.4.11)を尻目に、イナリワン、早めスパートからキッチリと脚を伸ばして、決勝点では1歳年長のフレッシュボイス(1983.5.9)の追い込みをクビだけ抑えていました。いきなりの1000mの距離短縮でも負けない。それが天皇賞馬のプライド。春の古馬中長距離GIで、よく見る光景でもあります。
1989年のイナリワンとフレッシュボイスの決着は、「1984年生まれの馬が天皇賞・春でGI初勝利を収めた後、2番人気で挑んだ宝塚記念で、1983年生まれの安田記念勝ち馬を破る」という図式でした。振り返ればそれは、前年1988年のタマモクロス(1984.5.23)とニッポーテイオー(1983.4.21)の戦いの軌跡を辿るかのようでした。
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 4F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | オグリキャップ | 牡4 | 59 | 南井克巳 | 1:46.7 | 46.3 |
498 [+8] |
瀬戸口勉 | 1 | |
2 | 4 | イナリワン | 牡5 | 59 | 柴田政人 | 1:46.7 | ハナ | 46.0 |
446 [-6] |
鈴木清 | 3 |
3 | 7 | メジロアルダン | 牡4 | 58 | 岡部幸雄 | 1:46.9 | 1.1/2 | 46.7 |
512 [+8] |
奥平真治 | 2 |
4 | 5 | ウインドミル | 牡4 | 57 | 蛯沢誠治 | 1:47.0 | クビ | 47.2 |
472 [前走不明] |
久保田敏夫 | 7 |
5 | 3 | グランドキャニオン | 牡4 | 57 | 東信二 | 1:47.2 | 1.1/2 | 46.8 |
460 [-6] |
新関力 | 4 |
イナリワンは2着に敗れたレースではありますが、この毎日王冠を「1989年のベストバウト」とされる方も多いので、ぜひご覧ください。
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 3F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 15 | イナリワン | 牡5 | 56 | 柴田政人 | 2:31.7 | レコード | 35.9 |
448 [+2] |
鈴木清 | 4 |
2 | 4 | スーパークリーク | 牡4 | 57 | 武豊 | 2:31.7 | ハナ | 36.4 |
522 [-2] |
伊藤修司 | 2 |
3 | 12 | サクラホクトオー | 牡3 | 55 | 小島太 | 2:32.1 | 2.1/2 | 36.1 |
450 [+4] |
境勝太郎 | 3 |
4 | 9 | ランニングフリー | 牡6 | 56 | 菅原泰夫 | 2:32.3 | 1.1/4 | 36.9 |
458 [+6] |
本郷一彦 | 9 |
5 | 1 | オグリキャップ | 牡4 | 57 | 南井克巳 | 2:32.5 | 1 | 37.4 |
496 [0] |
瀬戸口勉 | 1 |
上述の毎日王冠2着の後、天皇賞・秋(GI)6着、ジャパンカップ(GI)11着と精彩を欠いたイナリワン。
けれど、1989年の掉尾を飾る大一番で、さながら紅白歌合戦のトリを務める演歌歌手のように、締めました。
*
イナリワン。1989年は春秋を通じて年間GI3勝の活躍を遂げ、平成最初のJRA年度代表馬になりました。天皇賞・春を3分18秒8のレコードで勝ち、有馬記念を2分31秒3のレコードで勝つ。高速決着に強いステイヤーだったイナリワン、450kg前後の小柄な馬体でも、走りのスケールは雄大。「平成三強」の一角を担ったイナリワン、中央で挙げた3勝はすべてGIレースという、ここ一番の勝負強さが光った名馬でした。
イナリワンの属する1984年生まれ世代は、タレントが揃ったひとつ下の最強世代、1985年生まれ世代に隠れがちではありますが、
- サクラスターオー(1984.5.2)
- タマモクロス
- イナリワン
と、3年連続でJRA年度代表馬を送り込んだ強力な世代です。気が付けば、この「その日に生まれた馬を辿る」企画でも、3頭を紹介することになりました。3頭の活躍した年が1年ずつずれていることで、それぞれが同じレースでまみえたことは、1度もありませんでした。
あとは、メリーナイス(1984.3.23)を紹介できれば、1984年生まれ世代の牡馬の、「父から満8歳時の0遺伝を受けたGI馬」たちの記事を完遂できます。確認したところ、再来年、2016年3月23日が水曜日ですので、それまでお待ちください(^^;)
*
閑話休題。イナリワン、上述した同世代の馬たちや、しのぎを削った「平成三強」の好敵手オグリキャップ(1985.3.27)、スーパークリーク(1985.5.27)は、既に虹の橋の向こう側へ行ってしまいました。
1980年代後半から1990年代初頭の競馬ブームの真っ只中を走り、今やそのブームの生き証人ならぬ生き証馬となった、イナリワン。
細身の身体に宿した大きな生命力で、先に逝ってしまったライバルたちの分も、息災に長生きして欲しいものです。
では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。