春を迎えると、日々、馬の誕生日を思ってしまうオオハシでございます。という訳で、その日に生まれた馬を辿る企画を、今年2013年も毎週水曜日にお届けしたいと思いました。「自分と同じ年に生まれた馬を辿る」記事もありますが、こちらも併せてお届け致します。その第6回は「ナカノコールを呼び起こした馬」を。
アイネスフウジン 牡 黒鹿毛 1987.4.10生~2004.4.5没 浦河・中村幸蔵氏生産 馬主・小林正明氏 美浦・加藤修甫厩舎
シーホーク 芦毛 1963.3.16 種付け時活性値:1.75 |
Herbager 鹿毛 1956 |
Vandale 鹿毛 1943 |
Plassy 1932 |
Vanille 1929 | |||
Flagette 栗毛 1951 |
Escamillo 1939 | ||
Fidgette 1939 | |||
Sea Nymph 芦毛 1957 |
★Free Man 鹿毛 1948 |
Norseman 1940 | |
Fantine 1943 | |||
Sea Spray 芦毛 1947 |
Ocean Swell 1941 | ||
Pontoon 1940 | |||
テスコパール 栗毛 1976.4.22 仔受胎時活性値:0.50 |
テスコボーイ 黒鹿毛 1963 種付け時活性値:1.00 |
Princely Gift 鹿毛 1951 |
Nasrullah 1940.3.2 |
Blue Gem 1943 | |||
Suncourt 黒鹿毛 1952 |
Hyperion 1930.4.18 | ||
Inquisition 1936 | |||
ムツミパール |
モンタヴァル 鹿毛 1953.1.28 種付け時活性値:0.75 |
Norseman 1940 | |
Ballynash 1946 | |||
マサリュウ 鹿毛 1955.6.7 仔受胎時活性値:0.25 |
★トサミドリ 鹿毛 1946.5.20 種付け時活性値:0.00 |
||
ユキツキ 鹿毛 1946.4.26 仔受胎時活性値:2.00(0.00) |
<5代血統表内のクロス:Norseman4×4、Blue Peter5×5、Firdaussi5×5(父方)、Nasrullah4×5(母方)>
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
シーホーク (Herbager系) |
テスコボーイ (Princely Gift系) |
モンタヴァル (Blandford系) |
トサミドリ (Blandford系) |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 母の何番仔? |
シーホーク (Vandale) |
3.25 or 1.25 |
ハクタイセイと同牝系 (No.4-d プロポンチス系) |
7番仔 (7連産目) |
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 3F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 8 | アイネスフウジン | 牡2 | 54 | 中野栄治 | 1:34.4 |
タイ レコード |
37.4 |
518 [+8] |
加藤修甫 | 5 |
2 | 12 | サクラサエズリ | 牝2 | 53 | 木藤隆行 | 1:34.8 | 2.1/2 | 37.9 |
446 [0] |
境勝太郎 | 2 |
3 | 11 | マイネルハイル | 牡2 | 54 | 横山典弘 | 1:34.9 | クビ | 36.6 |
446 [0] |
稗田研二 | 14 |
4 | 5 | クロスキャスト | 牡2 | 54 | 杉浦宏昭 | 1:34.9 | クビ | 37.0 |
494 [+4] |
二本柳俊夫 | 3 |
5 | 10 | ホワイトストーン | 牡2 | 54 | 柴田政人 | 1:35.3 | 2.1/2 | 36.4 |
434 [+2] |
高松邦男 | 4 |
逃げた牝馬サクラサエズリ(1987.2.27)の叩き出したペースが、800m通過45秒1、1000m通過56秒9のハイラップ。追い駆ける側が大変になる逃げというのは確かに存在しますが、それを番手追走から悠々と捕まえに行ったアイネスフウジン。518kgの雄大な黒鹿毛、同期の桜を2馬身半差振り切った決勝点で刻んだ時計は、1分34秒4。かのマルゼンスキー(1974.5.19)の記録とタイレコードでの快勝でした。
*
着 順 |
馬 番 |
馬名 | 性齢 |
斤 量 |
騎手 |
走破 時計 |
着差 |
上り 3F |
馬体重 [前走比] |
調教師 |
人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 12 | アイネスフウジン | 牡3 | 57 | 中野栄治 | 2:25.3 |
レース レコード |
36.6 |
514 [+2] |
加藤修甫 | 3 |
2 | 6 | メジロライアン | 牡3 | 57 | 横山典弘 | 2:25.5 | 1.1/4 | 35.6 |
506 [-6] |
奥平真治 | 1 |
3 | 4 | ホワイトストーン | 牡3 | 57 | 田面木博公 | 2:25.7 | 1.1/2 | 35.6 |
434 [-2] |
高松邦男 | 12 |
4 | 16 | ツルマルミマタオー | 牡3 | 57 | 田島信行 | 2:25.7 | クビ | 35.4 |
478 [+4] |
橋口弘次郎 | 10 |
5 | 19 | ハクタイセイ | 牡3 | 57 | 武豊 | 2:25.9 | 1.1/2 | 37.1 |
448 [-2] |
布施正 | 2 |
東京競馬場に集まった観衆19万6517人は、今を以て世界レコードだそうな。そんな大観衆が見守る中で逃げた、アイネスフウジンと中野栄治騎手。府中の杜に住まいし競馬の神様は、芝2400mに「逃げ」で挑む馬人に、時折、微笑み掛けます。そうして、競馬者の心を、掴んでやまないのです。
この第57回日本ダービーの秘話について、JRA50周年記念サイトのアサカオー(1965.5.12)のページが秀逸ですので、引いておきます。
「アイネスフウジンが5枠の12番だと知ったときには、これは勝てるぞって確信しちゃったよ。なぜならな、中村牧場が出した菊花賞馬のアサカオーはよ、なんと5月12日生まれなんだわさ。おまけによ、アイネスに乗る中野栄治騎手の結婚記念日が5月12日なんだ。これは神さまが用意してくれた馬番だべ」
話にはまだ先があり、
「それがねえ、不思議なんだ。ダービーの日に羽田へ行く飛行機の席が12番で、競馬場の指定席も12番。これはアサカオーが用意してくれたんじゃねえべかって。ダービーで3着だったアサカオーの馬番は5だったな」
と幸蔵さんは笑った。
牧場の先輩が果たせなかった日本ダービー制覇。アイネスフウジン、その2年前にサクラチヨノオー(1985.2.19)が記録したダービーレコードを1秒も塗り替える2分25秒3で、見事に逃げ切りました。前々週の安田記念(GI)ではオグリキャップ(1985.3.27)の1分32秒4、前週のオークス(GI)ではエイシンサニー(1987.3.29)の2分26秒1、そして日本ダービーではアイネスフウジンの2分25秒3と、3週続けてのレースレコード更新でした。馬場状態が良かったという背景があったにせよ、結局、馬場改修が行われた2002年までに、2分25秒3を破るダービー馬は現れませんでした。ついで申し上げれば、オグリキャップとエイシンサニーのレコードも、馬場改修が行われた2002年までに更新する馬は現れませんでした。
*
マイルの2歳王者決定戦をタイレコードで勝ち、クラシックディスタンスの競馬の祭典をレコードで制す。
スピードとスタミナの類まれな融合ぶりを発揮した、アイネスフウジン。
自然発生を見せた「ナカノコール」と共に、競馬ファンの記憶に残って行く、名馬の1頭です。
では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。