タマモクロス(1984.5.23)。

春を迎えると、日々、馬の誕生日を思ってしまうオオハシでございます。という訳で、その日に生まれた馬を辿る企画を、今年は毎週水曜日にお届けしたいと思います。その12回目は「稲妻2世」を。

タマモクロス 牡 芦毛 1984.5.23生~2003.4.10没 新冠・錦野牧場生産 馬主・タマモ(株) 栗東・小原伊佐美厩舎

タマモクロス(1984.5.23)の4代血統表

シービークロス
芦毛 1975.5.5
種付け時活性値:0.00
フォルティノ
芦毛 1959.4.19
Grey Sovereign
芦毛 1948
Nasrullah 1940.3.2
Kong 1933
Ranavalo
鹿毛 1954
★Relic 1945
Navarra 1948
ズイショウ
芦毛 1968.3.19
パーソロン
鹿毛 1960
Milesian 1953
Paleo 1953
キムラス
芦毛 1961.2.13
タークスリライアンス 1948.4.22
ローヤルディール 1946
グリーンシャトー
栗毛 1974.2.10
仔受胎時活性値:0.25
シャトーゲイ
栗毛 1960.2.29
種付け時活性値:1.25
Swaps
栗毛 1952.3.1
★Khaled 1943
Iron Reward 1946
Banquet Bell
栗毛 1951
★Polynesian 1942
Dinner Horn 1937
クインビー
鹿毛 1966.4.16
仔受胎時活性値:1.75
★テューダーペリオッド
栃栗毛 1957
種付け時活性値:0.00
Owen Tudor 1938
Cornice 1944
コーサ
黒鹿毛 1960.4.8
仔受胎時活性値:1.25
ヒンドスタン
黒鹿毛 1946
種付け時活性値:1.25
ミスチャネル
黒鹿毛 1951.10.25
仔受胎時活性値:1.875

<5代血統表内のクロス:Hyperion5×5(母方)>

タマモクロス(1984.5.23)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
★シービークロス
(フォルティノ系)
シャトーゲイ
(Khaled系)
テューダーペリオッド
(Owen Tudor系)
ヒンドスタン
(Bois Roussel系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
シャトーゲイ
(Iron Maiden)
5.125 半妹ミヤマポピー
(No.21-a ミスチャネル系)
4番仔
(4連産目)

母グリーンシャトーは北橋修二・元調教師の初出走初勝利馬でもありました。Wikipediaのグリーンシャトーの記事を引くと、

管理した北橋修二によると性格は神経質で食が細い面もあったが勝負根性があり道悪が上手かった。

とのこと。タマモクロスは「食が細い」ということで小原伊佐美調教師を嘆かせましたけれど、それは母から譲り受けたものだったのでしょう。

そんなグリーンシャトーは、タマモクロス、ミヤマポピー(1985.5.26)という2頭のGI馬を送り出した名繁殖牝馬でしたが、繋養されていた錦野牧場の倒産閉場の後に移ったマエコウファーム(現ノースヒルズマネジメント)にて1987年7月30日に亡くなっています。タマモクロスとミヤマポピーは、故郷を失い、そして母を失った後に、兄妹でGI4勝を遂げたのでした。

*

第97回天皇賞・春(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 8 タマモクロス 牡4 58 南井克巳 3:21.8    49.4 448
[-4]
小原伊佐美 1
2 14 ランニングフリー 牡5 58 菅原泰夫 3:22.3 3 50.7 446
[-2]
本郷一彦 13
3 5 メジロデュレン 牡5 58 村本善之 3:22.7 2.1/2 51.1 456
[+4]
池江泰郎 2
4 11 マウントニゾン 牡5 58 天間昭一 3:23.1 2.1/2 50.1 440
[+2]
森安弘昭 11
5 10 ゴールドシチー 牡4 58 河内洋 3:23.7 3.1/2 51.6 490
[-4]
清水出美 3

満3歳秋に挑み直した芝レースで突然目覚めた後は、圧勝と苦境をないまぜにしての5連勝。6連勝目は、昭和天皇と同年生まれの三野道夫オーナーが焦がれる程に望んだ天皇盾に挑み、八大競走51回目の挑戦となった南井克巳騎手(現調教師)に、GI競走初制覇をプレゼントするという結末でした。それはまた、三野オーナー、小原調教師にとっても、初めてのGI勝利でもありました。

*

第29回宝塚記念(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 タマモクロス 牡4 56 南井克巳 2:13.2    48.0 444
[-4]
小原伊佐美 2
2 9 ニッポーテイオー 牡5 57 郷原洋行 2:13.6 2.1/2 48.9 484
[+2]
久保田金造 1
3 12 スダホーク 牡6 56 田島良保 2:13.8 1.1/4 47.9 466
[-4]
古山良司 8
4 6 ランドヒリュウ 牡6 56 河内洋 2:13.8 アタマ 48.4 500
[0]
小林稔 6
5 11 フレッシュボイス 牡5 57 武豊 2:14.0 1 48.4 462
[-8]
境直行 3

前年の天皇賞・秋(GI)とマイルCS(GI)、当年の安田記念(GI)と出走したGIを3連勝中だったニッポーテイオー(1983.4.21)に1番人気は譲ったものの、勝利は譲らなかったタマモクロスと南井騎手。いつもの「内々を通って」ではなく、外を回って、ねじ伏せるようにした直線、決勝点では2と2分の1馬身を着けての完勝でした。

#余談。後の物語に続くことになりますが、ニッポーテイオーとタマモクロスには共通点がありますね。「兄が天皇賞・秋を制した後、2週間後に妹がエリザベス女王杯を制する」。かたやタレンティドガール(1987.4.27)、こなたミヤマポピー。同一牝系の連動する活躍。時を下って、1995年にはサクラチトセオー(1990.5.11)とサクラキャンドル(1992.4.9)兄妹によっても、同様に成されました。やっぱり血の勢いですよね(^^ゞ

*

第98回天皇賞・秋(GI)の結果(上位5頭。馬齢は現年齢表記に合わせる)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
4F
馬体重
[前走比]
調教師
1 9 タマモクロス 牡4 58 南井克巳 1:58.8    46.7 452
[+8]
小原伊佐美 2
2 1 オグリキャップ 牡3 56 河内洋 1:59.0 1.1/4 46.2 492
[-2]
瀬戸口勉 1
3 12 レジェンドテイオー 牡5 58 郷原洋行 1:59.5 3 47.8 524
[0]
田村駿仁 9
4 5 ダイナアクトレス 牝5 56 岡部幸雄 1:59.6 クビ 46.4 480
[0]
矢野進 3
5 3 ランニングフリー 牡5 58 菅原泰夫 1:59.8 1.1/4 47.0 452
[+8]
本郷一彦 7

芦毛対決に湧いた、昭和最後の天皇賞。一方重賞6連勝中のオグリキャップ(1985.3.27)、他方重賞5連勝中のタマモクロス。差し追い込みで古馬王道路線を進んで来たタマモクロス、府中芝2000mで一転して、先行2番手からの競馬。自分から勝ちに行く形で、1歳年下の怪物を1と4分の1馬身抑えての勝利。1分58秒8の勝ち時計は当時歴代3位の好タイムでした。そしてまた、宝塚記念からぶっつけで挑むというローテーション。その食の細さを逆手に取った小原師の英断もフォローにして、タマモクロス。史上初の「天皇賞春・秋連覇」を遂げたのでした。

*

1988年に年間GI3勝、2着2回と挑んだGIですべて連対を果たしたその活躍により、昭和最後のJRA年度代表馬となったタマモクロス。

JRAが「ヒーロー列伝」でタマモクロスに与えたキャッチコピーは「風か光か」。

タマモクロスが、あの独特の、顔を突き出しクビを伸ばした走法で伸びた様は、まさに閃光。

そうして燦めいた白い稲妻は、競馬者の心の中で、ずっと、光を放ち続けます。

  

では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

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