ブエナビスタ(2006.3.14)。

春を迎えると、日々、馬の誕生日を思ってしまうオオハシでございます。という訳で、その日に生まれた馬を辿る企画を、今年は毎週水曜日にお届けしたいと思います。1回目の天才少女を受けて、2回目はその愛娘を。

ブエナビスタ 牝 鹿毛 2006.3.14生 早来・ノーザンファーム生産 馬主・(有)サンデーレーシング 栗東・松田博資厩舎

ブエナビスタ(2006.3.14)の4代血統表
スペシャルウィーク
黒鹿毛 1995.5.2
種付け時活性値:0.50

サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
★Halo
黒鹿毛 1969.2.7
Hail to Reason 1958.4.18
Cosmah 1953.4.4
Wishing Well
鹿毛 1975.4.12
Understanding 1963.2.17
Mountain Flower 1964.3.23
キャンペンガール
鹿毛 1987.4.19
マルゼンスキー
鹿毛 1974.5.19
Nijinsky 1967.2.21
シル 1970.4.22
レディーシラオキ
鹿毛 1978.4.3
セントクレスピン 1956
ミスアシヤガワ 1964.5.24
ビワハイジ
青鹿毛 1993.3.7
仔受胎時活性値:1.00
Caerleon
鹿毛 1980.3.27
種付け時活性値:1.00
Nijinsky
鹿毛 1967.2.21
Northern Dancer 1961.5.27
Flaming Page 1959.4.24
Foreseer
黒鹿毛 1969.4.12
Round Table 1954.4.6
Regal Gleam 1964.3.17
アグサン
青毛 1985.3.23
仔受胎時活性値:1.75
Lord Gayle
黒鹿毛 1965
種付け時活性値:0.75
Sir Gaylord 1959.2.12
Sticky Case 1958
Santa Luciana
黒鹿毛 1973
仔受胎時活性値:0.75
★Luciano
黒鹿毛 1964
種付け時活性値:0.00
Suleika
黒鹿毛 1954
仔受胎時活性値:0.50

<5代血統表内のクロス:Nijinsky4×3、Hail to Reason4×5、Turn-to5×5>

ブエナビスタ(2006.3.14)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
スペシャルウィーク
(Halo系)
Caerleon
(Nijinsky系)
Lord Gayle
(Sir Gaylord系)
Luciano
(Owen Tudor系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Caerleon 4.00 母、兄、妹が重賞勝ち馬
(No.16-c)
6番仔
(3連産目)

*

では、以下にブエナビスタのごく簡単な近親牝系図を示しておきます。なお、JRA重賞の「Jpn」は「G」にしています。

アグサン 1985.3.23 英0勝
|ジョーンズギフト 1990.2.1 英0勝
||Tomori 1999.1.9 独伊1勝 独1000ギニー(GII)2着 独ダービー(GI)3着ほか伊GII3着1回独GIII3着1回
|ビワハイジ 1993.3.7 中央4勝 阪神3歳牝馬S(現阪神JF、GI)含む重賞3勝
||アドマイヤジャパン 2002.4.16 中央2勝 京成杯(GIII) 菊花賞(GI)2着
||アドマイヤオーラ 2004.2.19 中央4勝 京都記念(GII) 弥生賞(GII) シンザン記念(GIII) 日本ダービー(GI)3着
||ブエナビスタ 2006.3.14 (本馬) 中央9勝 ジャパンカップ(GI) 天皇賞・秋(GI) オークス(GI) 桜花賞(GI) ヴィクトリアマイル(GI) 阪神JF 京都記念 チューリップ賞(GIII)
||トーセンレーヴ 2008.3.21 現役 アイルランドT(OP) プリンシパルS(OP) 青葉賞(GII)3着 毎日杯(GIII)3着
||ジョワドヴィーヴル 2009.5.13 現役 阪神JF(GI) チューリップ賞(GIII)3着

*

2008年10月26日の新馬戦(京都6R。芝外回り1800m)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 11 アンライバルド 牡2 55 岩田康誠 1:51.7    33.8 478
[]
友道康夫 3
2 2 リーチザクラウン 牡2 55 小牧太 1:51.9 1.1/4 33.6 520
[]
橋口弘次郎 2
3 4 ブエナビスタ 牝2 54 安藤勝己 1:52.0 3/4 33.5 452
[]
松田博資 1
4 8 スリーロールス 牡2 55 横山典弘 1:52.2 1.1/2 34.3 504
[]
武宏平 8
5 5 エーシンビートロン 牡2 55 内田博幸 1:52.5 1.3/4 35.0 472
[]
西園正都 4

上位4頭が翌年の皐月賞(GI)馬、日本ダービー2着馬、桜花賞&オークス馬、菊花賞馬と、5大クラシックすべての連対馬を輩出した伝説の新馬戦。こんな新馬戦には、そうそうお目にかかれません。

*

第60回阪神JF(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 13 ブエナビスタ 牝2 54 安藤勝己 1:35.2    34.8 450
[0]
松田博資 1
2 2 ダノンベルベール 牝2 54 後藤浩輝 1:35.6 2.1/2 35.6 448
[-8]
国枝栄 3
3 9 ミクロコスモス 牝2 54 鮫島良太 1:35.8 1.1/4 35.2 454
[+2]
角居勝彦 4
4 7 ショウナンカッサイ 牝2 54 幸英明 1:36.0 1.1/4 36.2 440
[-4]
北出成人 10
5 5 イナズマアマリリス 牝2 54 吉田豊 1:36.2 1.1/2 35.9 434
[0]
松元茂樹 8

未勝利戦勝ちから折り返して挑んだ阪神JFは抽選を通り抜けての出走だったものの、単勝2.2倍の1番人気。後方3番手からの競馬で直線弾けて快勝。見事に母仔2代の2歳牝馬王者に輝きました。

*

第16回チューリップ賞(GIII)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 5 ブエナビスタ 牝3 54 安藤勝己 1:36.5    34.7 450
[0]
松田博資 1
2 7 サクラミモザ 牝3 54 藤岡佑介 1:36.7 1.1/4 35.4 458
[-4]
畠山吉宏 7
3 1 ルージュバンブー 牝3 54 小牧太 1:36.9 1.1/4 35.0 488
[-10]
佐藤正雄 8
4 3 ブロードストリート 牝3 54 藤田伸二 1:37.0 3/4 35.1 448
[-8]
藤原英昭 2
5 4 ジェルミナル 牝3 54 福永祐一 1:37.1 クビ 35.0 460
[+2]
藤原英昭 3

母の満16歳の誕生日に捧げた娘の勝利は、単勝1.1倍の圧倒的1番人気に応えた結果でした。母が2着に敗れた雪辱を娘が晴らしました。

*

第69回桜花賞(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 9 ブエナビスタ 牝3 55 安藤勝己 1:34.0    33.3 454
[+4]
松田博資 1
2 18 レッドディザイア 牝3 55 四位洋文 1:34.1 1/2 33.7 478
[+2]
松永幹夫 2
3 15 ジェルミナル 牝3 55 福永祐一 1:34.3 1.1/2 33.8 456
[-4]
藤原英昭 5
4 6 ワンカラット 牝3 55 藤岡佑介 1:34.4 3/4 34.0 486
[-6]
藤岡健一 6
5 14 ルージュバンブー 牝3 55 小牧太 1:34.4 ハナ 34.2 494
[+6]
佐藤正雄 8

遅れてやって来たライバル・レッドディザイア(2006.4.19)との初対戦となった桜花賞。先に抜け出したライバルの外から追い込み、ねじ伏せました。一族悲願のクラシック制覇の瞬間でした。

*

第70回オークス(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 7 ブエナビスタ 牝3 55 安藤勝己 2:26.1    33.6 446
[-8]
松田博資 1
2 3 レッドディザイア 牝3 55 四位洋文 2:26.1 ハナ 34.2 484
[+6]
松永幹夫 2
3 14 ジェルミナル 牝3 55 福永祐一 2:26.6 3 34.4 462
[+6]
藤原英昭 4
4 13 ブロードストリート 牝3 55 藤田伸二 2:26.9 1.3/4 34.7 446
[0]
藤原英昭 6
5 8 ディアジーナ 牝3 55 内田博幸 2:27.1 1.1/2 35.5 486
[+2]
田村康仁 3

このオークスの結果を受けて「歴史は繰り返すのか」と思ってしまいました。1993年に松田博資厩舎の先輩牝馬ベガ(1990.3.8)が2冠を達成した際と同じく、桜花賞1~3着馬が、そのままオークスでも1~3着を占め、そして4着にスイートピーS(OP)の勝ち馬が入るという結末。ベガ、ユキノビジン(1990.3.10)、マックスジョリー(1990.4.26)、デンコウセッカ(1990.6.16)……。おお、我が青春。

*

第103回京都記念(GII)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 13 ブエナビスタ 牝4 55 横山典弘 2:14.4    33.4 458
[+12]
松田博資 1
2 12 ジャガーメイル 牡6 57 C.ルメール 2:14.5 1/2 33.3 480
[-1]
堀宣行 3
3 7 ドリームジャーニー 牡6 59 池添謙一 2:14.7 1.1/2 33.3 438
[+12]
池江泰寿 2
4 1 ホクトスルタン 牡6 57 川田将雅 2:14.8 3/4 34.8 520
[+16]
庄野靖志 6
5 3 セラフィックロンプ 牝6 55 宮崎北斗 2:14.9 1/2 34.4 496
[-2]
武藤善則 13

半兄アドマイヤオーラとの兄妹制覇となった京都記念。後方からの差し脚自慢から転じて、先行3番手から抜け出すというスマートな競馬で勝利を収めました。

*

第5回ヴィクトリアマイル(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 11 ブエナビスタ 牝4 55 横山典弘 1:32.4    33.5 448
[]
松田博資 1
2 2 ヒカルアマランサス 牝4 55 内田博幸 1:32.4 クビ 34.3 448
[-8]
池江泰郎 8
3 10 ニシノブルームーン 牝6 55 北村宏司 1:32.5 3/4 33.5 480
[0]
鈴木伸尋 11
4 17 レッドディザイア 牝4 55 四位洋文 1:32.5 ハナ 33.9 476
[]
松永幹夫 2
5 9 ブロードストリート 牝4 55 藤田伸二 1:32.5 アタマ 33.9 446
[-8]
藤原英昭 4

ドバイシーマクラシック(UAEGI)での惜しい2着から挑んだ帰国初戦。久しぶりのマイル戦のペースに戸惑ったのか、後方からの競馬になったものの、最後は矢のように伸びて、2着馬をクビだけ交わし切りました。

*

第142回天皇賞・秋(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 ブエナビスタ 牝4 56 C.スミヨン 1:58.2    34.1 456
[-4]
松田博資 1
2 7 ペルーサ 牡3 56 安藤勝己 1:58.5 2 33.6 502
[-4]
藤沢和雄 4
3 12 アーネストリー 牡5 58 佐藤哲三 1:58.7 1.1/2 34.8 530
[0]
佐々木晶三 2
4 5 オウケンサクラ 牝3 54 北村宏司 1:58.9 1.1/4 35.2 492
[-12]
音無秀孝 17
5 14 ネヴァブション 牡7 58 後藤浩輝 1:58.9 クビ 34.7 492
[+6]
伊藤正徳 11

史上初の「父娘制覇」となった天皇賞・秋。私はこのレースを見て、「ブエナビスタという牝馬は、ウオッカとダイワスカーレットを足して2で割ったような感じがする牝馬です。あの剛胆さと安定性の同居は、そんな風にしか表現できない。オメメぱっちりの可愛らしいを顔しているし、華奢な感じもするのですが、ね。しかし、よくもまぁ、立て続けに歴史的名牝に出逢うもの」と、思ったものでした。

*

第31回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 2 ブエナビスタ 牝5 55 岩田康誠 2:24.2    33.9 464
[+2]
松田博資 2
2 16 トーセンジョーダン 牡5 57 C.ウィリアムズ 2:24.2 クビ 34.3 478
[0]
池江泰寿 6
3 1 ジャガーメイル 牡7 57 四位洋文 2:24.5 1.3/4 34.0 484
[-6]
堀宣行 14
4 5 トレイルブレイザー 牡4 57 武豊 2:24.6 1/2 34.6 488
[-2]
池江泰寿 11
5 12 ウインバリアシオン 牡3 55 安藤勝己 2:24.7 3/4 35.0 512
[-4]
松永昌博 7

父と同じように「凱旋門賞馬が1番人気、自身が2番人気」で挑んだジャパンカップ。見事に前年の忘れ物を取り戻しました、ブエナビスタ。久しぶりに見えた勝利の絶景。ゴールで待っていたのは、今度こその、史上2組目の「ジャパンカップ父仔制覇」にして、初の「父娘制覇」。女王、衰えるところ微塵もなし。ただただ、お見事でした。

*

淡々と振り返りましたが、この名牝の凄いところは、[9-8-3-3]という生涯成績に現れるように、「敗れてもなお懸命にトップを目指す」というところに集約されると思います。GI6勝、2着7回、3着2回、着外3回は、ひたすらに駆けた彼女の姿の有り様を示しています。また、4歳春のドバイシーマクラシック以降はGIレースにしか出走していません。常に全力を発揮できるように調整された陣営の手腕もサスガと言うべきです。そして、陰りが見えたかと思われた5歳秋に逆襲のJC勝利を見せたあたりに、ブエナビスタの内に秘めたる闘志を感じたものでした。

泰然自若とした才媛の次のステージ。すでにキングカメハメハ(2001.3.20)の仔を受胎したという報せが届きました。名繁殖系だけに掛かる期待も大きいでしょう。そう、元を辿ればドイツのシュレンダーハン牧場の16号族Sラインに属する牝系。気が付けば、ビワハイジ(Biwa Heidi)、ブエナビスタ(Buena Vista)と、母仔2代で「B」で始まる馬名となっています。ドイツの馬名ルールに倣い、日本発のBラインが継承されるのも、素敵なことではないでしょうか。そして、いずれ世界に血が還って行く。夢は広がります。

星ひとつにつぶらな瞳、薄手の鹿毛の馬体。目を瞑れば、彼女の疾走がよぎります。ブエナビスタ、その絶景の物語は、代を重ねてなお、あまねく、連なって行くはずです。

では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

  

#余談。社台さんの生産されたGI馬にリトルアマポーラ(2005.1.24)がいますが、彼女も祖母ルイジアナピット(Louisiana Pit)、母リトルハーモニー(Little Harmony)、リトルアマポーラ(Little Amapola)と3代続けて「L」で始まる馬名となっています。先ごろ、リトルアマポーラの初仔の牡馬-父はやはりキングカメハメハ-が生まれたというニュースが流れましたけれど、「Lで始まる馬名にならないかなぁ」、なんて思っています(^^)

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