「北半球に居を構えた繁殖牝馬のうち、4頭のGI勝ち馬を輩出したのは4頭だけ」ということで、その4頭の血統を確認してみようという記事です。とは言うものの、実は1頭はすでにご案内しているのですが(^^;)
まま、気を取り直しまして、まずご紹介するのは「名競走馬にして名繁殖牝馬」の鑑であるDahlia(1970.3.25)から。
“キング・ジョージ”(英GI)連覇の様子。何度見てもしびれるレースぶり。1回目の1973年、2回目の1974年共に大楽勝。1回目。直線、馬場中央を抜け出す時の脚の速いこと。あっという間に抜け出して6馬身差の圧勝。しかも、愛オークス(GI)からの連闘でレースレコード勝ちですって(^^;)。2回目。その直線の手応え。必死に追い上げる女王陛下のHighclere(1971)以下に対して「おいで、おいで」甚だしい。鞍上のレスター・ピゴット騎手も左右後方を確認する余裕あり。強っ。また「Dahlia – 1974 Man O’ War Stakes」という動画もありますよ。何なんでしょうね、この強さは(笑)
Dahlia 牝 栗毛 1970.3.25生 米国・N.B.ハント氏生産 馬主・N.B.ハント氏→A.E.ポールソン氏 仏国・M.ジルベール厩舎→米国・C.ウィッティンガム厩舎
Vaguely Noble[C] |
ヴィエナ 栗毛 1957 |
Aureole 栗毛 1950 |
Hyperion 1930.4.18 |
Angelola 1945 | |||
Turkish Blood 鹿毛 1944 |
Turkhan 1937 | ||
Rusk 1935 | |||
Noble Lassie 鹿毛 1956 |
Nearco 黒鹿毛 1935.1.24 |
Pharos 1920 | |
Nogara 1928 | |||
Belle Sauvage 栗毛 1949 |
Big Game 1939 | ||
Tropical Sun 1940 | |||
Charming Alibi(USA) 栗毛 1963.3.7 仔受胎時活性値:1.50 |
Honeys Alibi[C] 黒鹿毛 1952 種付け時活性値:0.50 |
Alibhai 栗毛 1938 |
Hyperion 1930.4.18 |
Teresina 1920 ♀ | |||
Honeymoon 鹿毛 1943 |
Beau Pere 1927 | ||
Panoramic 1932 | |||
Adorada(ARG) 栗毛 1947 仔受胎時活性値:1.75(1.625) |
Hierocles[A] 栗毛 1939 種付け時活性値:1.75 |
Abjer 1933 | |
Loika 1926 | |||
Gilded Wave(USA) 栗毛 1938 仔受胎時活性値:2.00 or 0.00(0.125) |
Gallant Fox[A] 鹿毛 1927 種付け時活性値:0.50 |
||
Ondulation(USA) 1920 仔受胎時活性値:0.25 |
<5代血統表内のクロス:Hyperion4・5×4、Bahram5×5(父系)>
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
---|---|---|---|
Hierocles | 5.50 or 3.50 |
直仔に重賞勝ち馬6頭 (No.13-C) |
初仔 |
仏愛英米加伊と6カ国を渡り歩いて48戦15勝、↑の”キング・ジョージ”連覇の他、サンタラリ賞(仏GI)、愛オークス、ワシントンDCインターナショナルS(旧米GI)、サンクルー大賞(仏GI)、ベンソン&ヘッジズゴールドカップ(現英インターナショナルS、GI)2回、マンノウォーS(米GI)、カナダインターナショナルチャンピオンシップS(現カナディアンインターナショナルS、加GI)、ハリウッド招待H(現チャールズウィッティンガム記念H、米GI)など4年連続でGI勝利を収め、通算ではGI11勝(注)を挙げた世紀の名牝Dahlia。その能力は繁殖牝馬としても見事に発揮されました。
注):カナダインターナショナルチャンピオンシップSはDahliaが制した1974年当時はGIIで翌1975年からGIに格上げされた模様。もしそうならば、GIは10勝ですね。まま、ここまで来ると、1勝に大差はないような感じですが(苦笑)
*
Dahliaの血統を中島理論的に見た時に気になったところは、祖母Adoradaが亜国生まれであることです。亜国生まれであれば南半球産で「秋仔」の為に活性値「0.125」の加減を思うところです。しかし、Webで確認をすると、祖母父Hieroclesはずっと北半球で供用されており、曾祖母Gilded WaveはHieroclesの種を宿した状態で亜国に渡り、亜国で出産したのがAdoradaのようです。そして、亜国で生まれたAdoradaは1歳時に米国へ輸出されたということ。これらを踏まえると「北半球年齢になってしまうAdoradaは米国に帰すことが得策」という判断だったのではないかと考えます-結果的にAdoradaは不出走だったようですが-。
もし、Adoradaを北半球産と同等と判断するのであれば、Dahliaの料的遺伝値は「5.50 or 3.50」となり、繁殖牝馬としてのクレジットは「5.25 or 3.25」という数値になります。いっぽう、Adoradaを南半球産と同等と判断するのであれば、Dahliaの料的遺伝値は「3.50」となり、繁殖牝馬としてのクレジットは「3.25」という数値になります。
Dahliaの母Charming Alibiが71戦も走った鉄の女であったことから、Dahlia自身も48戦も走った女丈夫であったことから、そして以下に示すDahliaの代表産駒たちが一様に長く走り続けたところから、ここではMaxの料的遺伝値「5.50」とクレジット「5.25」を信じたいと思います。
*
という訳で、Dahliaの主な産駒を示しておきます。
産駒名 (生年月日 性別) |
父馬名 (生年月日) |
戦績 |
主な勝ち鞍(あるいは主な入着歴) ※格付けはいずれも競走当時のもの。 |
備考 |
---|---|---|---|---|
ダハール (1981.5.7 牡) |
Lyphard (1969) |
29戦7勝 |
リュパン賞(仏GI) サンファンカピストラーノ招待H(米GI) サンルイレイS(米GI) センチュリーH(米GI) |
サンルイレイSではシンボリルドルフ(1981.3.13)を破る。後に輸入種牡馬として導入されるも、主立った産駒を輩出できず。 |
リヴリア (1982.4.20 牡) |
Riverman (1969) |
41戦9勝 |
カールトンF.バークH(米GI) サンルイレイS(米GI) ハリウッドターフH(米GI) |
輸入種牡馬としてナリタタイシン(1961.6.10)などを輩出。しかしながら初年度産駒がクラシックを走っていた1993年に早世。惜しかった。 |
Delegant (1984.5.11 牡) |
Grey Dawn (1962.3.13) |
36戦7勝 | サンファンカピストラーノ招待H(米GI) | |
Dahlia’s Dreamer (1989.2.19 牝) |
Theatrical (1982.3.13) |
21戦5勝 | フラワーボウル招待H(米GI) | GI勝ちを収めた仔のうち唯一の牝馬。 |
Wajd (1987.3.17 牝) |
Northern Dancer (1961.5.27) | 11戦4勝 |
エヴリ賞(仏GII) ミネルヴ賞(仏GIII) |
英セントレジャー(GI)馬Nedawi(1995.4.9)の母。 |
Llandaff (1990.2.27 牡) |
Lyphard (1969) |
16戦5勝 | ジャージーダービー(米GII) | スイスの首位種牡馬に輝き、現在ポーランドの国営牧場で供用。 |
ディカードレム (1979.3.28 牡) |
What a Pleasure (1965.4.24) |
44戦6勝 | サンセットH(米GI)3着 | 輸入種牡馬としてセンゴクシルバー(1989.4.7)、イイデザオウ(1989.4.23)などを輩出。 |
ベゴニア (1983.5.12 牝) |
Plugged Nickle (1977.3.1) |
3戦0勝 | 輸入繁殖牝馬。 |
よくもまぁ、これだけの仔どもたちが走ったものです。しかし、それでも仔どもたちが4頭で勝ち取ったGIの合計は9つ。母には足りません。恐るべしはDahlia。しかし、この名牝をして8戦して一度も勝てなかったAllez France(1970.5.24)という牝馬はいったい何なのでしょうね(^^;)
*
という訳で、Dahliaにとって最強のライバルであったAllez Franceの4代血統表も以下に示しておきます。
Allez France 牝 鹿毛 1970.5.24生 米国・ビーバー・ヤコブス・ステーブル生産 馬主・D.ヴィルデンシュタイン氏 仏国・A.クリムシャ厩舎→A.ペンナ厩舎
Sea-Bird[x] 栗毛 1962.3.8 種付け時活性値:1.75 |
Dan Cupid 栗毛 1956.2.14 |
Native Dancer 芦毛 1950.3.27 |
Polynesian 1942 |
Geisha 1943 | |||
Vixenette 栗毛 1944 |
Sickle 1924 | ||
Lady Reynard 1939 | |||
Sicalade 鹿毛 1956 |
Sicambre 黒鹿毛 1948 |
Prince Bio 1941 | |
Sif 1936 | |||
Marmelade 鹿毛 1949 |
Maurepas 1937 | ||
Couleur 1939 | |||
Priceless Gem 黒鹿毛 1963.4.10 仔受胎時活性値:1.50 |
Hail to Reason[A] 黒鹿毛 1958.4.18 種付け時活性値:1.00 |
Turn-to 鹿毛 1951 |
★Royal Charger 1942 |
Source Sucree 1940 | |||
Nothirdchance 鹿毛 1948 |
Blue Swords 1940 | ||
Galla Colors 1943 | |||
Searching 鹿毛 1952 仔受胎時活性値:0.50 |
War Admiral[D] 黒鹿毛 1934.5.2 種付け時活性値:0.25 |
★Man o’War 1917.3.29 | |
Brushup 1929 | |||
Big Hurry 青鹿毛(?) 1936 仔受胎時活性値:1.75 |
★Black Toney[z] 青鹿毛 1911 種付け時活性値:0.00 |
||
La Troienne 鹿毛 1926 仔受胎時活性値:0.25 |
<5代血統表内のクロス:なし>
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
---|---|---|---|
Sea-Bird (Sicambre) |
4.00 |
母が米GI級2勝馬 (No.1-S) |
2番仔? (2連産目?) |
凱旋門賞(仏GI)、仏オークス(GI)、仏1000ギニー(GI)、ヴェルメイユ賞(仏GI)、ガネー賞(仏GI)2回、イスパーン賞(仏GI)、クリテリウム・デ・プーリッシュ(現マルセルブサック賞、仏GI)と仏国のGIを8勝した名牝Allez France。生涯13勝すべてが仏国内によるもので、まさに「Allez France(行け、フランス)」の名に相応しい馬でした。
Allez Franceはアメリカン・ダミー×2、Phalaris(1913)系×1、Matchem(1748)系×1というバラエティに富んだ4代血統構成。高祖母が史上に残る名繁殖牝馬La Troienne。また、母Priceless Gemは2歳時に同じLa Troienne系のBuckpasser(1963.4.28)を破ったこともある活躍馬です。
一部重複するところもありますが、Allez FranceとDahliaの各々が制した大レースの勇姿を。しかし、Allez Franceが勝った凱旋門賞で2着だったComtesse de Loir(1971)の鞍上であるJ.C.ドサン騎手のうなる右腕、風車ムチはスゴイですね。余談となりますが、ドサン騎手はノーザンテースト(1971.3.15)が制した唯一のGIレース、フォレ賞(仏GI)の鞍上でした。Comtesse de LoirとノーザンテーストはJ.カニングトン厩舎の同い年のステーブルメイトだったようです。
*
Dahliaの名前の由来になったであろうキク科の植物ダリア。その花言葉は「華麗」「優雅」「威厳」「感謝」「移り気」「不安定」とのこと。
移ろいやすいのは女性の心の性なのか、その競走成績はちょっと不安定なところもあったDahlia。それでも、勝つ時はいつでも華麗で優雅でなお威厳のあるレースぶり。
Dahlia、その花言葉のままに生きたような、20世紀を代表する名花でした。
ではでは、今日はこのへんで。
コメント
Dahliaと聞くと、リヴリア、ナリタタイシン、ビワハヤヒデ、
パシフィカス、ナリタブライアン、そして早田牧場、、と
あの時代の記憶がよみがえってきます。
今の血統表からみると、すっぽり抜け落ちたような。
Dahliaのキングジョージの映像は初めて見ましたが、
強かったんですねぇ。。
◎ゴリ様
いつもお世話になっております。
>Dahliaと聞くと、
おお、素晴らしい連想(笑)。私も同じような連想になりますよ。
今は無き早田牧場の黄金期でした。
リヴリアは夭折が本当に惜しい種牡馬でした。
BMSとしてもテイエムオーシャンが出ましたので、
母方に回っても良い仕事ができたと思います。
>Dahliaのキングジョージ
ホントに何度見てもしびれる強さです。
世界レベルの牝馬の凄さを見せ付けられます。
ではでは、わざわざのコメント、誠にありがとうございました♪
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