中山グランドジャンプ(J・GI)3連覇の偉業を達成したカラジ(1995.2.20)の父として知られるKahyasi。「カラジの父」。今となってはそちらの通りが良いのは仕方ありませんね(苦笑)
ただ、それでも、私にとってはNijinsky(1967.2.21)系種牡馬のうち、最も好きなイルドブルボン(1975.5.23)の最良産駒であることには今もって変わりありません。ええ、わたしゃメモリージャスパー(1991.5.5)を応援していた訳ですよ(笑)
念の為、Kahyasiの競走成績を辿ると[5-1-0-1]。その主な勝ち鞍に英ダービー(GI)、愛ダービー(GI)、ダービートライアルS(英GIII)。デビューから愛ダービーまでは5戦5勝の無敗で通過しています。秋になってニエユ賞(仏GII)2着、凱旋門賞(仏GI)6着と敗れて、3歳で引退しました。なお、敗れた凱旋門賞の勝ち馬はトニービン(1983.4.7)です。
では、以下にKahyasiの4代血統表を示しておきます。
Kahyasi 牡 鹿毛 1985.4.2生 愛国・アガ・カーン殿下生産 馬主・アガ・カーン殿下 英国・L.クマーニ厩舎
イルドブルボン[A] 黒鹿毛 1975.5.23 種付け時活性値:0.25 |
Nijinsky 鹿毛 1967.2.21 |
Northern Dancer 鹿毛 1961.5.27 |
Nearctic 1954.2.21 |
Natalma 1957.3.26 | |||
Flaming Page 鹿毛 1959.4.24 |
Bull Page 1947 | ||
Flaring Top 1947 | |||
Roseliere 黒鹿毛 1965 |
Misti 黒鹿毛 1958 |
Medium 1946 | |
Mist 1953 | |||
Peace Rose 芦毛 1959 |
Fastnet Rock 1947 | ||
La Paix 1951 | |||
Kadissya 鹿毛 1979.3.15 仔受胎時活性値:1.25 |
Blushing Groom[A●] 栗毛 1974 種付け時活性値:1.00 |
Red God 栗毛 1954.2.15 |
Nasrullah 1940.3.2 |
Spring Run 1948 | |||
Runaway Bride 鹿毛 1962 |
Wild Risk 1940 | ||
Aimee 1957 | |||
Kalkeen 鹿毛 1974.2.18 仔受胎時活性値:1.00 |
Sheshoon[D] 栗毛 1956 種付け時活性値:0.25 |
Precipitation 1933 | |
Noorani 1950 | |||
Gioia 鹿毛 1959 仔受胎時活性値:1.50 |
Crepello[F] 栗毛 1954 種付け時活性値:1.00 |
||
Bara Bibi 鹿毛 1951 仔受胎時活性値:1.75 |
<5代血統表内のクロス:Nearco5×5×5、Menow5×5>
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
---|---|---|---|
Blushing Groom (Runaway Bride) |
5.50 |
甥サニングデール (No.5-E) |
初仔? |
母Kadissyaは仏2勝と競走歴があるため、恐らく、Kahyasiは初仔ではないかと推測します。また、Kahyasiの3歳年下の半妹がカディザデー(1988.5.23)で、彼女の不受胎後の6番仔が高松宮記念(GI)の勝ち馬サニングデール(1999.4.1)です。また、4代血統表では見えませんが、Kahyasiの5代母はMasaka(1945)です。Masakaの孫が輸入種牡馬のシルバーシャーク(1963)ですね。この5号族、生粋のアガ・カーン自家生産牝系のひとつと言えると思います。
Kahyasiは「Nijinsky系種牡馬×Blushing Groom牝馬」というニックで生産されています。Kahyasi自身も無敗の英ダービー馬ですが、このニックからは後年同じく無敗で英ダービーを制するラムタラ(1992.2.2)も輩出されています。代を経た馬では今年の英オークス(GI)馬Look Here(2005.2.28)、返しニックではファンタスティックライト(1996.2.13)などが思い当たりますね。って、パッと思い当たる馬が少なすぎますか。エライすみません(苦笑)
中島理論的に見た時に、Kahyasiの最優性先祖は母父Blushing Groomと推定します。Blushing Groomを最優性先祖に持ってきたことで、Kahyasiの繁殖成績はフィリーサイアー寄りになり、そしてまた「母方に入って底力アップ」という要素が増したように見受けます。って、父、母父、祖母父、曾祖母父と、いずれも「母方に入って(も)良い仕事をするタイプ」ということも言えますが(苦笑)
フィリーサイアー寄りということで、私がカラジ以前のKahyasiの仔ということで想起した馬は、仏オークス(GI)馬Vereva(1994.5.11)-同馬はKahyasi満8歳時の0交配馬。また母父Mill Reef(1968.2.23)も満16歳時の0交配-、同じく仏オークス馬Zainta(1995.5.3)-同馬の曾祖母がZahra(1974.4.7)で今年の仏2冠牝馬Zarkava(2005.3.31)と同牝系-と、やはり牝馬でした。
*
まま、繁殖成績を見直すと圧倒的に母方に入って良い仕事をしているKahyasi。その最たる代表馬をご紹介しておきましょう。
Hasili 牝 鹿毛 1991.3.12生 愛国・ジャドモントファーム生産 馬主・カリド・アブドゥラ殿下 仏国・H-A.パントール厩舎
Kahyasi[A] 鹿毛 1985.4.2 種付け時活性値:1.25 |
イルドブルボン 黒鹿毛 1975.5.23 |
Nijinsky 鹿毛 1967.2.21 |
Northern Dancer 1961.5.27 |
Flaming Page 1959.4.24 | |||
Roseliere 黒鹿毛 1965 |
Misti 1958 | ||
Peace Rose 1959 | |||
Kadissya 鹿毛 1979.3.15 |
Blushing Groom 栗毛 1974 |
Red God 1954.2.15 | |
Runaway Bride 1962 | |||
Kalkeen 鹿毛 1974.2.18 |
Sheshoon 1956 | ||
Gioia 1959 | |||
Kerali 栗毛 1984.3.4 仔受胎時活性値:1.50 |
High Line[C] 栗毛 1966 種付け時活性値:0.25 |
★ハイハット 栗毛 1957 |
Hyperion 1930.4.18 |
Madonna 1945 | |||
Time Call 鹿毛 1955 |
Chanteur 1942 | ||
Aleria 1949 | |||
Sookera 黒鹿毛 1975.5.15 仔受胎時活性値:2.00 |
Roberto[A] 鹿毛 1969.3.16 種付け時活性値:1.25+α |
Hail to Reason 1958.4.18 | |
Bramalea 1959.4.12 | |||
Irule 芦毛 1968.3.15 仔受胎時活性値:1.50 |
Young Emperor[A] 芦毛 1963 種付け時活性値:1.00 |
||
Iaround 鹿毛 1961.5.9 仔受胎時活性値:1.50 |
<5代血統表内のクロス:なし>
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
---|---|---|---|
Roberto (Kerali) |
6.50 |
直仔にGI勝ち馬4頭 (No.11) |
? (3連産目以降の仔) |
思わずゴシック体にしてしまいましたけれど、現在のところ、Hasiliは直仔にGI勝ち馬が4頭もいます。そしてGIを勝てなかったものの種牡馬として功名を遂げた仔もいます。
さて、繁殖牝馬としてのHasiliについて、中島理論的に目に付くのは「料的遺伝値のクレジットが5.00もある」ということです。Hasili自身「6.50」と強大な遺伝値を誇りますけれど、Hasiliまでの牝系4代の世代交代がいずれも満6歳から満8歳で行われており、活力のある体力の受け渡しがなされています。
では、Hasiliの驚嘆すべき繁殖成績を以下に示しておきます。
馬名 (生年月日) |
父 (活性値) |
母父 (活性値) |
祖母父 (活性値) |
曾祖母父 (活性値) |
主な勝ち鞍 |
---|---|---|---|---|---|
母 (活性値) |
祖母 (活性値) |
曾祖母 (活性値) |
高祖母 (活性値) |
||
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? | ||
Dansili (1996.1.27) |
デインヒル[A] (0.25) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
14戦5勝 ミュゲ賞(仏GII) エドモンブラン賞(仏GIII) メシドール賞(仏GIII) 他に仏2000ギニー(GI)2着 |
Hasili (1.00) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
Roberto | 6.00 |
妹弟活躍馬目白押し (No.11) |
初仔 | ||
Banks Hill (1998.2.24) |
デインヒル[A] (0.75) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
15戦5勝 ジャック・ル・マロワ賞(仏GI) BCフィリー&メアターフ(米GI) コロネーションS(英GI) 他に仏GII1勝 |
Hasili (1.50) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
Roberto (Kerali) |
6.50 |
兄妹弟活躍馬目白押し (No.11) |
2番仔 (前年産駒無し後の仔?) |
||
Heat Haze (1999.3.12) |
Green Desert[A] (1.75) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
14戦7勝 ビヴァリーD.S(米GI) メイトリアークS(米GI) 他に米GIII2勝 |
Hasili (1.75) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
Green Desert (Foreign Courier) |
6.75 |
兄妹弟活躍馬目白押し (No.11) |
3番仔 | ||
Intercontinental (2000.3.19) |
デインヒル[A] (1.25) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
22戦13勝 BCフィリー&メアターフ メイトリアークS 他に米GII3勝、米GIII3勝 |
Hasili (2.00 or 0.00) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
Roberto (Hasili) |
7.00 or 5.00 |
兄姉弟活躍馬目白押し (No.11) |
4番仔 | ||
Cacique (2001.5.2) |
デインヒル[A] (1.50) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
18戦7勝 マンノウォーS(米GI) マンハッタンH(米GI) 他に仏GII1勝、仏GIII2勝 |
Hasili (0.25) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
デインヒル | 5.25 |
兄姉弟活躍馬目白押し (No.11) |
5番仔 | ||
Champs Elysees (2003.3.21) |
★デインヒル[A] (0.00) |
Kahyasi[A] (1.25) |
High Line[C] (0.25) |
Roberto[A] (1.25+α) |
16戦3勝(現役) サンマルコスH(米GII) エドゥヴィル賞(仏GIII) 他に米GI2着1回、伊GI2着1回 |
Hasili (0.75) |
Kerali (1.50) |
Sookera (2.00) |
Irure (1.50) |
||
Roberto (Bramalea) |
5.75 |
兄姉活躍馬目白押し (No.11) |
6番仔 (前年産駒無し後の仔?) |
お、恐るべしは、名繁殖牝馬Hasili。4年連続でGI勝ち馬を送り続けるとは!!生涯で1頭GI勝ち馬を産み出せば十二分に名繁殖牝馬。ところが彼女は4頭も送り出し、勝てないまでもGI連対を果たしGII勝ちを収めた馬も2頭送り込んでいます。なんですか、今のところ産駒の重賞勝ち総数26勝、うちGI9勝って(笑)
なお、上記6頭の父をご確認頂くとお分かりのように、Heat Hazeを除く5頭が父デインヒル(1986.3.26)です。アブドゥラ殿下の宝刀デインヒルを立て続けに配することにより、これらの活躍馬たちが送り込まれました。余談となりますが、改めてアブドゥラ殿下の持ち馬を辿ると、日本に縁のある馬が多いですね。ダンシングブレーヴ(1983.5.11)&コマンダーインチーフ(1990.5.18)父仔、コマンダーインチーフの半兄ウォーニング(1985.4.13)、そしてデインヒルと日本の土地を踏んだ馬が多くいます。
また、Hasiliの初仔であるDansiliの名前を記憶されている血統ファンの方もいらっしゃるでしょう。思わず「ダンジリ?岸和田?」と思ってしまう彼は、凱旋門賞(仏GI)馬Rail Link(2003.3.26)の父としても知られていますね。そう、ディープインパクト(2002.3.25)が挑んだ2006年の凱旋門賞の勝ち馬がRail Linkです。Dansili、名繁殖族の血を種牡馬としていかんなく発揮したのでした。
*
先ほどZarkavaの名前をチラッと出しましたが、この仏2冠牝馬の母父もKahyasiですね。アガ・カーン殿下のクラシック勝ち馬にKahyasiが現れると、殿下が生産された傑作への愛情が垣間見えます。
という訳で、長くなりましたが、直父系ではなくとも、Kahyasiの血はこれからも脈々とつなげられていくのでしょう。死してなお生き続ける。世代を重ねる意味を深く思います。
ではでは、今日はこのへんで。
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