直祖父SSのJRA平地ジーワン勝ち馬を見直す。

天皇賞・春の過去10年の連対馬を確認した時に「単純なことながら、サンデーサイレンス(1986.3.25)の孫は、内孫、外孫含めて、まだ連対を果たしていませんね」と、ボソリと書きました。

そのひと言が自分の中で気になりましたので、今回はSS直孫のJRA平地ジーワン勝ち馬たちについて、その父たちの現役時代の成績を交えて、確認してみようと思います。

直祖父SSのJRA平地ジーワン勝ち馬たち
父名
(生年月日)
父の現役時代の成績
(注:年齢は満年齢表記)
産駒名
(生年月日)[受胎条件]
産駒のジーワン勝ち鞍
フジキセキ
(1992.4.15)
2~3歳時4戦4勝
[主な勝ち鞍]
GI:朝日杯3歳S(現朝日杯FS)
GII:弥生賞
カネヒキリ
(2002.2.26)
[-5]
ジャパンカップダート(GI)
フェブラリーS(GI)
ファイングレイン
(2003.3.7)[初仔]
高松宮記念(GI)
コイウタ
(2003.2.24)
[2-2]
ヴィクトリアマイル(JpnI)
ダンスインザダーク
(1993.6.5)
2~3歳時8戦5勝
[主な勝ち鞍]
GI:菊花賞
GII:京都新聞杯、弥生賞
ツルマルボーイ
(1998.3.5)
[初仔]
安田記念(GI)
ザッツザプレンティ
(2000.5.26)
[-8]
菊花賞(現JpnI)
デルタブルース
(2001.5.3)
[7-7]
菊花賞
メルボルンカップ(豪GI)
アグネスタキオン
(1998.4.13)
2~3歳時4戦4勝
[主な勝ち鞍]
GI:皐月賞
GII:弥生賞
GIII:ラジオたんぱ杯3歳S(現ラジオNIKKEI杯2歳S)
ロジック
(2003.3.17)
[2-7]
NHKマイルカップ(現JpnI)
ダイワスカーレット
(2004.5.13)
[4-10]
桜花賞(JpnI)
秋華賞(JpnI)
エリザベス女王杯(GI)
キャプテントゥーレ
(2005.4.5)[2-2]
皐月賞(JpnI)
ステイゴールド
(1994.3.24)
2~7歳時50戦7勝
[主な勝ち鞍]
GI:香港ヴァーズ
GII:ドバイシーマクラシック(現GI)、日経新春杯、目黒記念
ドリームジャーニー
(2004.2.24)
[初仔]
朝日杯FS(JpnI)
スペシャルウィーク
(1995.5.2)
2~4歳時17戦10勝
[主な勝ち鞍]
GI:ジャパンカップ、日本ダービー、天皇賞・春、天皇賞・秋
GII:京都新聞杯、弥生賞、阪神大賞典、AJC杯
GIII:きさらぎ賞
シーザリオ
(2002.3.31)
[7-6]
オークス(現JpnI)
アメリカンオークス招待S(米GI)
アドマイヤベガ
(1996.3.12)
2~3歳時8戦4勝
[主な勝ち鞍]
GI:日本ダービー
GII:京都新聞杯
GIII:ラジオたんぱ杯3歳S
キストゥヘヴン
(2003.4.25)
[2-12]
桜花賞

改めて見直すと、なかなかに興味深いものですね。2008年5月6日時点で、種牡馬6頭により、12頭のジーワン勝ち馬が輩出されています。

さて、この表から気付くことを何点か挙げてみますと、

  • 3歳時に重賞勝ちを収めている父馬5頭は弥生賞、京都新聞杯のどちらか、あるいは両方共に制している

いや、確かにそうなのですが、最初に持ってくるのがこれですか(笑)。まま、改めて見ると不思議なシンクロだなと思いました。ダンスインザダークとスペシャルウィークという「SS×Nijinsky系牝馬」の組み合わせの2頭が両レースを、フジキセキとアグネスタキオンという4戦4勝でターフを去った2頭が弥生賞を、そしてアドマイヤベガが最後の秋開催となった京都新聞杯を制しています。ついで言えば、アドマイヤベガは弥生賞2着でしたね。中山芝2000mと京都芝2200mという舞台の現JpnII勝ち鞍が、意外に重要なのかも知れません。

では、気を取り直しまして、改めて見て行きますと、

  • 複数頭のジーワン勝ち馬を輩出しているフジキセキ、ダンスインザダーク、アグネスタキオンの3頭はいずれも3歳時に引退している
  • この3頭は春の頂点のレースを制していない

というところにまず目が行きますでしょうか。能力的には間違いなく同世代で「筆頭」と目される3頭です。しかし、いずれも故障により、古馬との戦いを知ることなく、同世代との戦いのみで引退して行きました。そして、結果的に、競走時には春の繁殖期の頂点を極められなかったという点で、種牡馬として伸び代があったということなのでしょうか。

合わせて、フジキセキ、アグネスタキオンの天才ランナー2頭は、父とも共通して「Northern Dancer&Native Dancer Free」であることもお伝えしておきます。配合の選択肢が広がるという点で、アドバンテージがあるのは確かでしょう。

続いて、表から確認できることは、

  • 国内の古馬GIレースを勝っている牡馬産駒たちは、いずれも母が前年産駒なし後の仔

ということでしょうか。フジキセキ産駒のカネヒキリ、ファイングレイン、そしてダンスインザダーク産駒のツルマルボーイ。3頭に共通して言えるのが、古馬GIの勝ち馬であると共に、母が前年産駒なし後の仔、ということです。彼らには「母体の充実」という後押しがあったからこその、古馬GI制覇だったのかも知れませんね。逆説的な見方をすれば、母の後押しがなければ、SS直孫の牡馬は2歳から3歳の若年期のジーワンでしか勝負ができない、とも言えるでしょうか。

コーフィールドカップ(豪GI)3着、そしてメルボルンカップ(豪GI)1着と豪州で快走を見せた「ヘビーステイヤー」デルタブルース。菊花賞馬である彼は、古馬となってからは、国内ではステイヤーズS(GII)を勝利したのみ。これは国内では自身と同じ血を持つ馬が多すぎて、闘争心が燃えないということなのでしょう。ハーレムが変わった途端に活が入ったように見えました。

SSの直孫として現在のところ最多であるJRAジーワン3勝を収めているダイワスカーレット。古馬混合GIであるエリザベス女王杯1着、そして牡牝混合GIである有馬記念で2着と、その能力の高さには舌を巻くばかりです。そんな彼女は、女馬故に、絶対能力の高さを余すところなく我々の前で見せてくれているように思います。

また、表からは、

  • 日本ダービー勝ち馬2頭は牝馬クラシックの勝ち馬を出すに止まっている

ということも言えます。

ただ、スペシャルウィークの愛娘シーザリオはよっぽどの能力を秘めた馬でした。父スペシャルウィークがSSの0交配馬、そして母キロフプロミエール(1990.4.15)が「★Sadler’s Wells×★Habitat×★Le Fabuleux×Darius」という累代で、中島理論的には、ある意味反則的な配合でした(笑)。そして、シーザリオにとっては女という性に出たのが幸いしたのでしょう。順位闘争を演じるだけでよい牝馬同士の争いで、「2.50」という強烈な潜在能力値そのままに、力を発揮したのでした。

ついで、キストゥヘヴンの父アドマイヤベガは、古馬と一度も相まみえることなく3歳で引退しており、古馬を含めての頂点には立っていない馬です。同世代が古馬となってからはテイエムオペラオー(1996.3.13)が絶対的存在として君臨していました。短絡的思考で恐縮ですが、同世代によるジーワンレースだけを制して種牡馬入りした馬は、他世代を含めた頂点を知らない為、比較的良駒を残せるのではないでしょうか。

合わせて、残念ながらアドマイヤベガは満8歳の秋に早世しており、種牡馬として4世代を残すのみでした。 もし、産駒が「これ以上おとっつぁんの血は増えない」と、本能的に察知しているのならば、これからジーワン勝ちを収める牡馬が輩出されてもおかしくありません。はは、アルナスライン(2004.2.18)やクリスタルウイング(2005.3.18)に対する予防線のコメントだと思われた閲覧者様、その通りです(笑)

#余談。ふと名前を出しましたが、クリスタルウイングは良い馬ですね。「★アドマイヤベガ×Nureyev×★Sharpen Up×★Terrible Tiger」と4世代で3回の0リフレッシュを用いています。ざっくりと8代残牡先祖を見たところ「5/128」と推定します。明るめの鹿毛、顔に流れる作など、姿形を見ると最優性先祖である母父Nureyev(1977.5.2)通りの形相が出ているように思いますけれど、青葉賞(JpnII)2着で距離に対する適性は示しました。半姉トゥザヴィクトリー(1996.2.22)が2着に敗れた府中芝2400mのジーワンステージは、同じ1999年に父が駆けたVロードでもあります。という訳で、アドマイヤベガのラストクロップ、頑張って欲しいものです。

閑話休題。

あと、「黄金旅程」ステイゴールドについて触れておきますと、

  • やはり母が前年産駒なし後の仔

ですね。産駒ドリームジャーニーは母オリエンタルアート(1997.5.12)の初仔です。そして「ステイゴールド×メジロマックイーン×◆ノーザンテースト×Lt.Stevens」という組み合わせ。ブルードメアサイアーに異系を組み込み、グランドメアサイアーをクロスで0化という中島理論的に乙な配合。2歳でマイルJpnI戦を勝ち、3歳秋に2400mのJpnII戦を勝ったのは、お見事でした。

最後に。中島御大もおっしゃっていることですが、

  • 長子、次子による父系継承

ということでしょうか。フジキセキは父の初年度産駒、ダンスインザダークは父の2年度産駒ですね。合わせて、SS直孫初の古馬GI勝ち馬となったツルマルボーイはダンスインザダークの初年度産駒ですね。いちおう、この若年期の交配による父系継承というのは、中島御大がブログで披露される前から感じておりまして、母父にSSを持つ初めてのジーワン勝ち馬であるラインクラフト(2002.4.4)が桜花賞を制した際にも、ちょこっと書いていたのでした。

ある種牡馬の初年度から4年度位までの血を持つ子孫は、先祖となった種牡馬自身の若い活力により、飽和先祖となった血でも後世に血を残せる印象を持っているからです。ここでは例は挙げませんが、内国産種牡馬のうち、父系をつなげている馬たちの生年を確認してみるとよく分かります。

まま、私の卑小な脳みそではこんなことくらいしか書けませんでした。何かお気付きになったことがあったら、ご教示頂ければ幸いです。

ではでは、今日はこのへんで♪

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