近年の活躍馬について、ニックスによる簡単な分類をしてみようという企画です。その第7回はHerod(1758)系とSt.Simon(1881)系、Matchem(1748)系とSt.Simon系、およびPhalaris(1913)系×Tom Fool(1949)系です。
上記のうち、前2つの組み合わせは、今日の日本ではほとんどお目にかかれないと思います。直父系にSt.Simon系を持つ牝馬がいても、コマーシャルベースのサンデーサイレンス(1986.3.25)系種牡馬や他のNearco(1935.1.24)系種牡馬、Mr.Prospector(1970.1.28)系種牡馬を付けてしまいますよね...。
さて、Herod系×St.Simon系のニックといえば、何をさておいてもシンザン(1961.4.2)ですね。日本が誇る5冠馬。代を経て孫のマイシンザン(1990.3.7)も同じニックから生まれました。近年では英ダービー(GI)馬ドクターデヴィアス(1989.3.10)がこの組み合わせの活躍馬として知られています。また、Herod系中興の祖であるTourbillon(1928)もこの組み合わせですね。あと、輸入種牡馬アーティアス(1974.2.26)やセントライト記念(GII)の勝ち馬ウインドフィールズ(1991.4.23)、初年度2頭の産駒から新馬戦勝ち馬ピサノランゲ(2002.5.5)を輩出した種牡馬ガルウイング(1994.5.29)もこのニックです。
Matchem系×St.Simon系は傑出馬を送り出せるニックという事。中島御大の配合馬である日本ダービー(現GI)馬クライムカイザー(1973.5.22)や天皇賞・春(現GI)の勝ち馬アサホコ(1960.6.27)、天皇賞・秋(現GI)の勝ち馬アイフル(1971.4.16)、今年の宝塚記念(GI)を制したスイープトウショウ(2001.5.9)でクローズアップされた宝塚記念馬エイトクラウン(1962.4.21)等がこの組み合わせです。
#エイトクラウンは直仔に同じく宝塚記念を制したナオキ(1969.4.25)を輩出しました。宝塚記念母仔制覇は、現在のところ、このひと組だけですね。なお、ナオキといえば、サウンドバリヤー(1992.3.7)の母父ですね。1995年暮れの愛知杯(GIII)、なつかしい。
閑話休題。Matchem系とSt.Simon系のニックという事で、オークス(現GI)3着ではありましたが、ラジオたんぱ賞(現GIII)の勝ち馬ホクセーミドリ(1976.3.24)。同馬は高木嘉夫元調教師と共に中島御大が日高を歩き、生産牧場の北星村田牧場さんで「この遺伝ならば重賞クラスになる」と進言されたそうです。余談となりますが、ホクセーミドリにパーソロン(1960)を配合してできたのがセブンレットウ(1984.5.9)。そして、セブンレットウにコマンダーインチーフ(1990.5.18)を配合してできたのが、阪神3歳牝馬S(現阪神JF、GI)の勝ち馬アインブライド(1995.4.14)でした。
Phalaris系とTom Fool系。Phalaris分枝系どうしの配合ですが、いわゆるアメリカン・ダミーの扱いにより、中島御大はニックとして収められています。日本では中島御大の著作でも示されているようにマルゼンスキー(1974.5.19)、ヤマニンスキー(1975.4.28)、ラシアンルーブル(1980.3.30)の『Nijinsky×Buckpasser牝馬』の名種牡馬たちが知られています。
日本においてこのニックで輩出された活躍馬は朝日杯3歳S(現朝日杯FS、GI)の勝ち馬で上述のマルゼンスキー、関屋記念(GIII)を制したスプライトパッサー(1987.6.6)くらいでしょうか。風聞で「Tom Fool系は日本ではあまり好かれていない(大意)」というお話を聞きました。去年JRAさんがシルバーチャーム(1994.2.22)を輸入されましたが、果たして産駒がどれくらい活躍してくれるでしょうか。頑張ってほしいものです。
ニックスの企画も中島御大の著作に示されている組み合わせをすべて確認しましたので、本編は今回で終了です。次回は簡単に補足等を行いたいと思います。
#追記。ちょっと衣替え。夏の間だけ、花火のイメージで。