ニックス(Hampton系×Sterling系、Phalaris系×Sterling系)。

近年の活躍馬について、ニックスによる簡単な分類をしてみようという企画です。その第6回はHampton(1872)系とSterling(1868)系、およびPhalaris(1913)系とSterling系です。

まず、Hampton系とSterling系のニックというと、『純白のダービー馬』Mahmoud(1933)、『黄金のステイヤー』Alycidon(1945.3.15)ですね。また独国ではこのニックを上手く活用して現代まで父系を伸ばしています。父系の継承を担っているHampton系の代表馬はAcatenango(1982)~ランド(1990.1.23)、Sterling系の代表馬はKonigsstuhl(1976)~Monsun(1990)等が日本では知られています。日本では『怪物』タケシバオー(1965.4.23)がこのニックの代表馬ですね。かつての日本ではメイヂヒカリ(1952.3.24)やキタノオー(1953.5.15)など『プリメロ系×トウルヌソル系』の組み合わせが良馬を輩出した時代もありました。また、名種牡馬リマンド(1965.2.16)の働きにより、オペックホース(1977.3.5)、アグネスレディー(1976.3.25)がこの組み合わせから輩出されました。 近年ではトミシノポルンガ(1989.3.31)がこの組み合わせの活躍馬として知られています。

Phalaris系とSterling系のニックというと、Nasrullah(1940.3.2)。日本の名種牡馬となったネヴァービート(1960)もこの組み合わせです。なるだけ近いところで引くと、2冠牝馬テスコガビー(1972.4.14)、日本ダービー(現GI)馬ラッキールーラ(1974.2.22)、種牡馬モガミ(1976.5.18)、2冠馬カツトップエース(1978.4.20)、仏ダービー(GI)馬ナトルーン(1984.4.20)、南半球の名馬ボーザム(1984.11.6)、英4冠馬Nashwan(1986.3.1)、英ダービー(GI)馬Shaamit(1993.2.11)、そしてディープインパクト(2002.3.25)の母ウインドインハーヘア(1991.2.20)というところでしょうか。また、ひと昔前に言われた「ロイヤルスキー(1974.5.24)はリマンド牝馬と相性が良い」というのも、大きく見れば、このニックです。その代表がアグネスフローラ(1987.6.18)やワカオライデン(1981.4.25)ですね。

#Hampton系とSterling系のニックの配合馬としてタケシバオー、Phalaris系とSterling系のニックの配合馬としてテスコガビーとラッキールーラとカツトップエースを忘れていた私はヒドイ奴です。駄目だコリャ。あーもう、自分で作成したインデックスのページよく見直せって(苦笑)。2005/07/28に追記しました。

#今回取り上げた2つのニックスは過去にさかのぼれば、日本でも活躍馬をたくさん輩出しているはずです。また時間ができたら、調べてみたいものです。

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ここからは、Sterling系についてちょっとお話を。

Sterling系は、もう少し至近性のある言い方をすると、Blandford(1919.5.26)系ですね。Blandford系は中島御大の著作にも示されているように、オンナ嫌いの種付け嫌いが多かったという事。故に血は優秀でも、数が残せなかった。4代血統構成に現れると「おっ、Blandford系がある。底力アップ」みたいに判断してしまいます。

さて、そのBlandford系の繁栄についてですが、中島御大の著作『サラブレッド0の理論』によると、20世紀後半の大種牡馬であるSadler’s Wells(1981.4.11)は、Blandford系種牡馬Val de l’Orne(1972)のダミー(天プラ馬)であるという事。Val de l’Orneの0遺伝により輩出されたSadler’s Wellsは、直父系の形相を受け継がず、上手に繁殖界に潜入したという判断です。

もしSadler’s WellsがホントにVal de l’Orneのダミーであれば、現在の血脈において、かなりの割合で『Phalaris系×Sterling系』の返しニックが発生している事になります。例えば、テイエムオペラオー(1996.3.13)。彼は『オペラハウス×Blushing Groom牝馬(ワンスウェド)』の組み合わせです。

またSadler’s WellsはNever Bend(1960)系やDante(1942)系との相性が良い事も知られていますが、Sadler’s Wellsをダミーとすると、どちらも『Phalaris系×Sterling系』の返しニックの扱いになります。特にNever Bend系との組み合わせは、Never BendとSadler’s Wellsの母父Bold Reason(1968)が半兄弟のため、その母Lalun(1952)の牝馬クロスが発生する事もあり、良馬を生み出す組み合わせとして知られています。 日本ではオペラハウス(1988.2.24)産駒のニホンピロジュピタ(1995.5.3)、オペラシチー(2001.4.16)がそのニックを踏んでいます。共にブレイヴェストローマン(1972.5.19)牝馬の仔ですね。

安易に「ダミー、天プラ」と言うと、血統解釈について方向性がなくなります。しかし、Sadler’s Wells系の成功している配合パターンやテイエムオペラオーの現役時代におけるド根性などの例を見るにつけ、「確かにダミーかもしれないな」と思ってしまいます。真相は私には分かりかねますが、現代競馬のメインストリームとなっている父系のひとつである事には違いありません。孫の代になって、ようやく日本でもSadler’s Wellsの系統が活躍し始めましたので、これからも注目して活躍馬の血統を見ていきたいと考えています。

コメント

  1. blandford より:

    こちらの記事へは、ちょっと遅れてのコメントとなってしまいました、スミマセン。
    リマンド牝馬がいなくなってからというもの、すっかりPhlaris×Sterlingという配合の馬も見かけなくなってしまいました。
    期待はパルブライトぐらいですかね?

    さてさてSadler’s Wells=Blandford系という説ですが、あれを読んだときはさすがに中島御大も「やっちゃったか?」と思ったものですが(笑)、しかしモンジューの活躍ぶりを見ると、これがノーザンダンサー系だと、どうも妙だ、理解に苦しむ、という感じがするのも確かです。

    欧州がSadler’sの天下になってからと言うもの、大レースを勝つのがけっこうPhalaris4段重ねの馬が多かったりして、腑に落ちないなあと思うときがしばしばでしたが、Sadler’sがBlandford系ならば一気に問題解決ですよね(笑)
    もしそうであるならば、オペラオーの強さも、いまごろになってようやく理解できる(笑)

  2. かろむわん より:

    ◎blandford様
    ども、ども。

    >Sadler’s Wells
    私がダミー説にちょっと否定的な立場でいるのは、「じゃあ、フサイチコンコルドの見解はなんだったんだ」という事なんですね。Northern Dancerのクロスがあったから、ダービーに勝てたんじゃないのかと。

    ま、「フサコンは、初仔だし別路線だったから勝てたのじゃ。血統は関係なし」と御大に言われたならば、そこでおしまいですが(笑)。

    あとは、この系統の馬が、これからの日本でどれくらい走るかを見ていくしかないですね。GIを勝つ馬がもっと出てきたら、ダミー説がもっと、もっともらしくなります。

    >パルブライト
    サインオブゴッド、激しく応援しています。

    こちらは以上で~す。

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