ジャパンカップ(GI)の30年を辿る(其の八)。

ふと、ジャパンカップ(GI)の過去30回について、勝ち馬を中心に辿ってみようと思いました。その8回目は第22回から第24回。

ちょっとね、ジャパンカップウィークに入って、息切れ加減でゴメンナサイ。まま、残りは21世紀に入ってからのレースですのでm(__)m

ファルブラヴ 牡 鹿毛 1998.2.28生 愛国・フランチェスカ農場生産 馬主・スキュデリアランカティ社 伊国・L.ダウリア厩舎

ファルブラヴ(1998.2.28)の4代血統表
Fairy King
鹿毛 1982.3.4
種付け時活性値:1.75
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic
黒鹿毛 1954.2.11
Nearco 1935.1.24
Lady Angela 1944
Natalma
鹿毛 1957.3.26
Native Dancer 1950.3.27
Almahmoud 1947
Fairy Bridge
鹿毛 1975.5.4
Bold Reason
鹿毛 1968.4.8
Hail to Reason 1958.4.18
Lalun 1952
Special
鹿毛 1969.3.28
Forli 1963.8.10
Thong 1964.4.23
Gift of the Night
黒鹿毛 1990.2.7
仔受胎時活性値:1.75
Slewpy
黒鹿毛 1980.3.28
種付け時活性値:0.25
Seattle Slew
黒鹿毛 1974.2.15
Bold Reasoning 1968.4.29
My Charmer 1969.3.25
Rare Bouquet
栗毛 1963.5.10
Prince John 1953.4.6
Forest Song 1958.5.16
Little Nana
栗毛 1975.3.18
仔受胎時活性値:1.50
Lithiot
鹿毛 1965.4.5
種付け時活性値:0.25
Ribot 1952.2.27
Lithia 1959.3.8
Nenana Road
栗毛 1970.4.4
仔受胎時活性値:1.00
★Kirkland Lake
栗毛 1961.4.20
種付け時活性値:0.00
Sena
栗毛 1951
仔受胎時活性値:0.50

<5代血統表内のクロス:なし>

ファルブラヴ(1998.2.28)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Fairy King
(Northern Dancer系)
Slewpy
(Bold Ruler系)
Lithiot
(Ribot系)
Kirkland Lake
(Hyperion系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Fairy King
(Djebel)
4.75
(No.4-i)
4番仔
(4連産目)
第22回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 1 ファルブラヴ 牡4 57 L.デットーリ 2:12.2    35.6 538
[不明]
L.ダウリア 9
2 8 サラファン せん5 57 C.ナカタニ 2:12.2 ハナ 35.3 516
[不明]
N.ドライスデール 11
3 7 シンボリクリスエス 牡3 55 O.ペリエ 2:12.3 クビ 35.7 536
[+6]
藤沢和雄 1
4 15 マグナーテン せん6 57 岡部幸雄 2:12.5 1.1/2 36.3 518
[+10]
藤沢和雄 8
5 10 ジャングルポケット 牡4 57 武豊 2:12.5 ハナ 35.3 478
[+4]
渡辺栄 3

2002年の第22回。東京競馬場の改修工事により、史上初めて中山競馬場の芝2200mで行われたジャパンカップ。勝利を収めたのはイタリア代表馬のファルブラヴ。その鞍上にはイタリアが産んだ天才、ランフランコ・デットーリ騎手。「ジャパンカップで勝利を収める時はハナ差勝ち」のフランキーマジックが発揮された2度目の回でした。

ファルブラヴの血統を初めて見た時、「エリシオのモノマネ配合やなぁ」と、単純に思ってしまいました。「父Fairy King×母父Slewpy牝馬」の組み合わせで、ファルブラヴの生まれが1998年ですから、生産者さんの意図の中に、1996年の凱旋門賞を制したエリシオ(1993.1.24)が全く無かったとは言えないでしょう。果たせるかなファルブラヴ、ジャパンカップ、クイーンエリザベス二世S(英GI)、インターナショナルS(英GI)、エクリプスS(英GI)、イスパーン賞(仏GI)、ミラノ大賞(伊GI)、共和国大統領賞(伊GI)、香港カップ(GI)とGI8勝を挙げて、エリシオに勝るとも劣らないFairy Kingの代表産駒となりました。端的なニックの好例と思います。

また2着のサラファン(1997.5.9)。平時は競馬場が左回りばかりの米国馬が、苦もなく右回りをこなしたことに驚きましたが、英国所属だった時代には右回りも経験していたのでした。そしてまた、彼はRoberto(1969.3.16)直仔のLear Fan(1981.2.2)産駒。「非根幹距離はRoberto系」。同じ中山コース、暮れのグランプリで何度も目の当たりにしたことでしたね。まま、このレースでは3着だったシンボリクリスエス(1999.1.21)が3歳時、4歳時とそれを見せ付けてくれました(^_^;)

*

タップダンスシチー 牡 鹿毛 1997.3.16生 米国・エコーヴァレーホースファーム生産 馬主・(株)友駿ホースクラブ 栗東・佐々木晶三厩舎

タップダンスシチー(1997.3.16)の4代血統表
Pleasant Tap
鹿毛 1987.5.8
種付け時活性値:0.25

Pleasant Colony
黒鹿毛 1978.5.4
His Majesty
鹿毛 1968.4.15
Ribot 1952.2.27
Flower Bowl 1952
Sun Colony
鹿毛 1968.2.25
★Sunrise Flight 1959.5.9
Colonia 1959
Never Knock
黒鹿毛 1979.5.10
Stage Door Johnny
栗毛 1965
Prince John 1953.4.6
Peroxide Blonde 1960.4.23
Never Hula
黒鹿毛 1969.4.21
★Never Bend 1960.3.15
Hula Hula 1952
All Dance
鹿毛 1978.4.2
仔受胎時活性値:0.50

Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
種付け時活性値:0.00
Nearctic
黒鹿毛 1954.2.11
Nearco 1935.1.24
Lady Angela 1944
Natalma
鹿毛 1957.3.26
Native Dancer 1950.3.27
Almahmoud 1947
All Rainbows
鹿毛 1973
仔受胎時活性値:1.00
★Bold Hour
黒鹿毛 1964
種付け時活性値:0.00
Bold Ruler 1954.4.6
Seven Thirty 1958.5.14
Miss Carmie
鹿毛 1966.2.21
仔受胎時活性値:1.50
★T.V.Lark
鹿毛 1957.2.12
種付け時活性値:0.00
Twice Over
黒鹿毛 1956.5.13
仔受胎時活性値:0.25

<5代血統表内のクロス:Nasrullah5×5、Polynesian5×5>

タップダンスシチー(1997.3.16)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
Pleasant Tap
(Ribot系)
★Northern Dancer
(Nearctic系)
★Bold Hour
(Bold Ruler系)
★T.V.Lark
(Nasrullah系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Pleasant Tap 3.25 叔母Winning Colors
(No.23-b)
12番仔
(3連産目)
第23回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 1 タップダンスシチー 牡6 57 佐藤哲三 2:28.7    37.4 502
[0]
佐々木晶三 4
2 10 ザッツザプレンティ 牡3 55 安藤勝己 2:30.2 9 38.0 496
[+4]
橋口弘次郎 5
3 5 シンボリクリスエス 牡4 57 O.ペリエ 2:30.3 3/4 37.1 540
[+6]
藤沢和雄 1
4 8 ネオユニヴァース 牡3 55 M.デムーロ 2:30.3 アタマ 37.0 488
[-4]
瀬戸口勉 2
5 11 アクティブバイオ 牡6 57 武幸四郎 2:30.5 1.1/4 38.1 500
[+2]
崎山博樹 15

2003年の第23回。府中芝2400mの神様は、時折、毅然とした「逃げ」でGIレースに挑む人馬に対して、微笑みかけます。平成に入ってから印象に残る人馬を振り返ると、中野栄治とアイネスフウジン(1987.4.10)、松永幹夫とイソノルーブル(1988.3.13)、小島貞博とミホノブルボン(1989.4.25)、大西直宏とサニーブライアン(1994.4.23)。そしてまた、神様に微笑まれた佐藤哲三とタップダンスシチー。いずれもが、透徹した意思を持って、しっかりと逃げ切った人馬でした。

一途な情熱に、神様は少しの花を贈ってくれるのかもしれませんね。

-月刊「優駿」、2000年10月号、P112、河村清明「生産者として、さらには経営者として」より抜粋。-

上の引用は、ビッグレッドファーム代表・岡田繁幸さんが、ユーワファルコン(1997.4.7)の中日スポーツ賞4歳S(現ファルコンS、GIII)制覇の際、生産者であるミルファーム代表・清水敏さんに対して贈られた言葉です。素敵な言葉だと思い、覚えています。

府中芝2400mを逃げ切るという至難の業。けれど、敢えてそれを選択した挑戦者の一途な思いに対して、府中芝2400mの神様が少しの花を贈ってくれた。カツラギエース(1980.4.24)のジャパンカップ(GI)制覇を見て、騎手への憧れをより一層強くされたという佐藤哲三騎手。それから19年経って、自身初騎乗となったジャパンカップ。1枠1番、意を決しての逃走。かつて自分が憧れた西浦勝一とカツラギエースと同じように、後続を引き離しての一人旅。3角から4角、一瞬鈍ったかのように見えた脚色。しかし、直線。思うように伸びない後続勢を、あざ笑うかのように、独走。彼のゴール後、1.5秒後にやっと2着馬ザッツザプレンティ(2000.5.26)がゴール。そうして着けた9馬身差は、ジャパンカップ勝ち馬として史上最大の着差でした。

強いものは強い。努力を重ねてタップダンスシチー、6歳秋に花開きました。CX系列の中継で塩原恒夫アナは「まんまと逃げ切りました」と叫ばれましたが、9馬身差は、「まんまと」と言うには着差がつき過ぎました。日本のGIレース史上に残る、圧勝劇でした。レース後、検量室前で愛馬を迎えた際の、佐々木晶三先生の嬉しそうな笑顔も良かった。曇天の府中に日本人の笑顔の花が咲いたのは、外国勢の皆さんには申し訳ないのですが、やっぱり日本人として嬉しかった。

競馬の神様は、時折、競馬者に対して、微笑みかけます。そうして、競馬者のこころを、ひきつけてやまないのです。

*

ゼンノロブロイ 牡 黒鹿毛 2000.3.27生 白老・白老ファーム生産 馬主・大迫忍氏 美浦・藤沢和雄厩舎

ゼンノロブロイ(2000.3.27)の4代血統表
サンデーサイレンス
青鹿毛 1986.3.25
種付け時活性値:1.25

Halo
黒鹿毛 1969.2.7
Hail to Reason
黒鹿毛 1958.4.18
Turn-to 1951
Nothirdchance 1948
Cosmah
鹿毛 1953.4.4
★Cosmic Bomb 1944
Almahmoud 1947
Wishing Well
鹿毛 1975.4.12
Understanding
栗毛 1963.2.17
★Promised Land 1954.3.31
Pretty Ways 1953.3.21
Mountain Flower
鹿毛 1964.3.23
Montparnasse 1956
Edelweiss 1959.2.15
ローミンレイチェル
鹿毛 1990.4.18
仔受胎時活性値:0.25
マイニング
栗毛 1984.4.4
種付け時活性値:1.25
Mr.Prospector
鹿毛 1970.1.28
Raise a Native 1961.4.18
Gold Digger 1962.5.28
I Pass
鹿毛 1978.4.8
Buckpasser 1963.4.28
Impish 1972.5.19
One Smart Lady
鹿毛 1984.5.3
仔受胎時活性値:1.25
Clever Trick
黒鹿毛 1976.3.10
種付け時活性値:1.75
Icecapade 1969.4.4
Kankakee Miss 1967.4.16
Pia’s Lady
鹿毛 1971.4.11
仔受胎時活性値:1.00
Pia Star
鹿毛 1961.4.20
種付け時活性値:0.25
Plucky Roman
鹿毛 1954.4.13
仔受胎時活性値:2.00(0.00)

<5代血統表内のクロス:なし>

ゼンノロブロイ(2000.3.27)の中島理論的総括
母父 祖母父 曾祖母父
サンデーサイレンス
(Halo系)
マイニング
(Mr.Prospector系)
Clever Trick
(Nearctic系)
Pia Star
(Hyperion系)
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 母の何番仔?
Clever Trick
(ローミンレイチェル)
4.50 母が米GI勝ち馬
(No.2-b)
5番仔
(5連産目)
第24回ジャパンカップ(GI)の結果(上位5頭)


馬名 性齢
騎手 走破
時計
着差 上り
3F
馬体重
[前走比]
調教師
1 9 ゼンノロブロイ 牡4 57 O.ペリエ 2:24.2    34.3 502
[+4]
藤沢和雄 1
2 10 コスモバルク 牡3 55 C.ルメール 2:24.7 3 35.3 492
[+6]
田部和則 2
3 7 デルタブルース 牡3 55 安藤勝己 2:24.8 クビ 34.6 512
[-14]
角居勝彦 7
4 1 ポリシーメイカー 牡4 57 S.パスキエ 2:24.8 アタマ 35.1 454
[不明]
E.ルルーシュ 14
5 4 ナリタセンチュリー 牡5 57 柴田善臣 2:24.9 1/2 34.9 460
[-4]
藤沢則雄 4

2004年の第24回。実は名うてのサウスポーだったゼンノロブロイが、前走の天皇賞・秋(GI)に続いてジャパンカップでも勝利を収めました。良馬場発表のジャパンカップでは現在でも2着との最大着差となる3馬身差の快勝。3歳秋から4歳春までの甘さはどこへやら、ジャパンカップの次走となった有馬記念(GI)も2分29秒5の日本レコードで勝利を収め、秋の古馬中長距離GI3連勝を遂げ、SS産駒として初めてJRA年度代表馬となりました。

「実は名うてのサウスポーだった」と書きましたが、彼の戦歴を辿ると、左回りでは[3-3-1-0]と3着を外したことはなかったのです。7戦の内6戦がGI、残りの1戦がGII。5歳時の英インターナショナルS(GI)ではElectrocutionist(2001.2.24)のクビ差の2着でした。まま、上述した有馬記念のレコード勝ちや3歳秋の神戸新聞杯(GII)で圧勝を収めた姿を思い出すにつけ、もちろん右回りでも強かったのですが。

また2着のコスモバルク(2001.2.10)。この2004年から始まる、道営のエースの6年連続ジャパンカップ出走。結局、もっとも成績が良かったのはこの3歳時の2着でした。3歳秋のコスモバルクは迫力がありましたね。特にセントライト記念(GII)の芝2200m2分10秒1の日本レコード勝ち。現在もまだ、燦然と日本レコードとして輝いています。

あと。「日本馬に騎乗した外国人騎手のワンツーフィニッシュ」は、この第24回が初めてのことでした。馬と人との組み合わせの多様性が増したのは良いことです。けれども、強い日本馬には日本人騎手が乗っていて欲しいと思うのは、ナチュラリズム(1988.10.19)ならぬナショナリズムの現れでしょうか(^_^;)

  

では、以上オオハシでした。これから走る馬、人すべてが無事でありますように。

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